研究課題/領域番号 |
16F16307
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
小柴 満美子 山口大学, 大学院創成科学研究科, 准教授 (90415571)
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研究分担者 |
TAO TING 山口大学, 創成科学研究科, 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2016-10-07 – 2019-03-31
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キーワード | 胎児期新生児 / 環境依存的発達 / 感覚-運動神経 / 治療環境 / 人工呼吸器 / 社会環境 / 長期継続計測 |
研究実績の概要 |
本研究は、埼玉医科大学IRB審査委員会において承認を得た内容を遵守し、保護者に同意を得た新生児集中治療室NICUに入院する未熟に出生した週齢27~34週の早産新生児を対象に、15名の患児に協力を得て4日~14日間の計測を実施することができた。胎児期新生児の心肺・行動の複数種情報を長時間継続的に24kHzのサンプルレートの音データとして計測取得するための装置を、患児が滞在する保育器内に設置し、計測を安全に実施した。 患児と環境の状態を確認するための画像情報を同時に毎秒24時間継続的に計測し、事象確認に利用することができた。退院時前のMRI脳画像診断、神経学的行動試験を医師により実施し、新生児集中治療室内での発達の最終状態を確認した。症例は主に他の疾患が併存しない早産新生児であり、本申請期も計測を継続している。 自動音源種識別分析として、今年度に特に焦点を当てたのは、生体への影響を与える可能性がある治療環境音である。発生源として医師、看護師などの医療従事者の介入時に発生する処置音やその前後、医療従事者や両親の社会的音声の他、人工呼吸補助装置の音などを認めた。特に、人工呼吸補助装置は出生週数が低いほど利用率の高い治療機器であること、一般的な生体が触れる可能性の低い長期持続的な特異音環境の可能性として、その音供給期間のパターンの可視化を試みた。FFT周波数解析を基盤とし、その特徴音域であることが仮定された500Hz以上のパワー値について抽出し、概日リズムなどの生物基盤の可視化に有効なダブルプロット法を利用することで、治療環境の音についての数日期間における状態変化を可視化することができた。呼吸症状に合わせて調整される本治療環境音が、発達週齢依存的な患児への何らかの影響を与えるかどうかを、引き続き症例数が蓄積され統計的評価に足る機を得て分析に処する見込みである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
新生児集中治療室という、臨床的重度が高い患者を対象とする24時間介入体制の医療現場を研究対象とすることから、常時変動すること、多様な計測を継続することが困難になる要因が少なからず予測されていた。しかし、研究員、陶テイ博士が的確な計測準備と実施を進め、分析に必要なデータの量的蓄積を順調に進めてくれている。
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今後の研究の推進方策 |
臨床的情報量として、できるだけ多くの患児数のデータを得て分析することが望ましいので、今後も計測を継続する。音分析のほかに、画像処理に基づく行動、および、体表温推移の自動処理分析を進める予定である。また、脳神経画像や血液学・細胞計測、心拍・酸素飽和度などの臨床情報を、共に取得しているので、複数因子間の相関解析を行い情報の構造化を図り、胎児期新生児の発達に影響を与える環境因子とその可視化システム開発を進め、学術報告を予定する。
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