研究課題/領域番号 |
16F16318
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
国場 敦夫 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (70211886)
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研究分担者 |
KELS ANDREW 東京大学, 大学院総合文化研究科, 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2016-11-07 – 2019-03-31
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キーワード | 可積分模型 / ヤン・バクスター方程式 / 超対称指標 |
研究実績の概要 |
ケルスにより発見された新しい楕円ベータ積分,級数の双曲極限を厳密に解析した.この極限が潰されたレンズ空間上の超対称量子場理論の指標の双対性を意味することを示した.この極限は,バジャノフ,マンガゼエフ,セルゲエフにより研究されたファデエフ・ボボルコフ模型を拡張する新しい可解格子模型をもたらす.更に,この極限はストックマンにより導かれた双曲ガンマ関数の評価式の新しい拡張を与えることを示した.これらの成果は国際学術誌 J. High Energ. Phys. に出版された. 山崎雅人氏との共同研究も行った.ルート系に付随する多変数楕円超幾何級数・積分の変換公式として新しいものを2種類数学的に証明した.これらはレインによる公式を複素や整数変数に拡張するもので,これまでに知られた多くの結果を特殊な場合として含む.それはレンズ空間上のゲージ理論の対に対してその超対称指標のサイバーグ双対性を意味することを示した.更にバジャノフとセルゲエフによる格子模型の拡張に対してヤン・バクスター方程式が従うことを示した.これらの結果を国際学術誌 SIGMA に投稿した. バクスターによる可解格子模型のZ不変性を拡張する計画もほぼ完成しつつある.この拡張はスター・トライアングル関係式を見たす全ての模型に適用可能であり,よく知られたイジング模型やカイラルポッツ模型も該当する.このような模型の準古典極限も考察し,アドラー,ボベンコ,スリスによる古典離散方程式との関係を明らかにしている.後者の場合,Z不変性は ロッブとナイホフにより提唱された閉包条件との関係を見出している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は,可積分系,超対称ゲージ理論,楕円超幾何積分の間に見出された新しい対応に関する重要な知見をもたらしている.将来的な展望も豊富である.結果の一つは査読付き国際学術誌 J. High Energ. Phys. に掲載され,もう一つは, やはり査読付き国際学術誌であるSIGMAの特集号に投稿された.更にウィーンで開催された国際研究集会においても発表し,参加した専門家から素晴らしい反響を得ている.この数ヶ月の間に完成予定の研究課題も幾つかあり,少なくとも論文二編となることが期待できる.以上の状況に鑑みて,本研究は概ね順調に進展していると判断できる.
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今後の研究の推進方策 |
バクスターによる可解格子模型のZ不変性を拡張する計画を完成させる.この拡張はスター・トライアングル関係式を見たす全ての模型,特によく知られたイジング模型やカイラルポッツ模型にも適用可能である.このような模型の準古典極限を詳細に解析し,アドラー,ボベンコ,スリスによる古典離散方程式との関係を明らかにする.後者の場合,Z不変性は ロッブとナイホフにより提唱された閉包条件との関係を見出しているが,その点を詳らかにする計画である. この他にも実現可能な更なる計画について述べる. ガラマロフと ケルスによる最近の結果により,ファデエフ・ボルコフ模型の新しいレンズ空間による拡張が得られている.準古典極限で,ファデエフ・ボルコフ模型は可積分サークルパターンの離散幾何との興味深い関係を持つことが知られている.このことからガラマロフと ケルスによるレンズ空間的拡張模型の準古典極限を調べることにより,可積分サークルパターンの離散幾何の拡張を開拓し,それとの関係を確立できると期待できる.可積分サークルパターンはQ3離散可積分方程式と呼ばれる構造と関係することが知られているので,レンズ空間的拡張は古典可積分方程式のサイドにも新しい拡張をもたらすものと考えられる.これについて詳細な研究を行う予定である.
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