研究実績の概要 |
平成29年度は理化学研究所「RIビームファクトリー」(RIBF)で核子ノックアウト反応の実験を行った。研究領域は中性子過剰なAr, Ca, Ti同位体であるが、ここで得られた核子ノックアウト反応の知見は、Sn-100やSn-132周辺の核構造研究に将来生かすことができる。実験では、厚い液体水素標的システムMINOS、高効率ガンマ線検出器DALI2、高運動量アクセプタンス磁気分析装置SAMURAIを組み合わせ、未知核のガンマ遷移データを大量に取得することに成功した。 偶奇核や奇奇核に比べ比較的スピーディーに解析および理論的解釈が可能な偶偶核、とくにCa-56を解析対象として選択し、すでにプレリミナリーな結果を得ている。中性子過剰なCa同位体の核構造に対して三体力効果が無視できないとする議論があり、また、新魔法数34の頑健性に関する議論を発展させるために、Ca-56の励起準位情報が熱望されていた。この結果は新魔法数34の頑健性を支持するものであり、国際会議などでも発表している。現在、投稿論文を準備している段階である。 この他に二つの主な研究実績がある。一つはSn-136のクーロン励起による電気四重極遷移確率の測定実験を代表者としてまとめ、RIBFの国際課題採択委員会に申請した。もう一つは、過去に取得したデータを第一著者としてまとめ、Physical Review Cに論文出版している。この結果はZr-102の核異性体の観測からZr-102はSr-100と異なり、ガンマソフトな原子核ではないと結論している。
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