研究課題
春季にはすでに採取済みの岩石試料について、化学分析および放射生年代測定を行った。夏季に代表者と分担者は、モンゴル国北部、ロシア国境周辺のフグスグル湖西方山地および東南方丘陵においてTuva-Mongolia Zone (TMZ) 内のGargan blockを対象に、先カンブリア時代の基盤岩類およびその上に累重する下部カンブリア系の地質調査と試料採取を行った。この調査には、代表者の研究室の大学院生3名、モンゴル科学技術大学の学生3名、さらに米国ハーバード大学と英国ケンブリッジ大学の研究者と大学院生らが加わった。のべ3週間に及ぶ調査によって、同帯に産する先カンブリア時代の基盤岩とそれを被う火山岩、貫入岩類および砕屑岩類の分布の概要を調べた。また採取した岩石を日本に送り秋/冬季に化学分析とジルコンのU-Pb年代を測定した。これらの研究成果の一部を海外および国内の学会で、口頭発表した。海外では代表者がGeol. Soc. America (米国、シアトル)およびIntern. Symp. Asian Orogeny & Continentla growth (台湾、台北;招待講演)にて、また分担者は2nd Internat. Meet. China-Russia Central Asian orogenic belt, Irkutsk(ロシア、イルクーツク)およびGeol. Soc. America (米国、シアトル)にて発表した。さらに分担者は、最近カナダのUniv. British Columbiaで招待講演を行った。また新たに得られた同帯の花崗岩類の放射性年代についての英文論文をPrecambrian Research誌に投稿中である。
2: おおむね順調に進展している
今年度の調査対象としたモンゴル北部のロシア国境地域は、極めて交通の便が悪く、また調査中に天候不順に見舞われたが、計画した地域の野外地質調査と岩石試料採取は予定どおり行うことができた。また採取した岩石類は速やかに東京へ輸送され、秋季以降順調に化学分析と年代測定に供された。これまでに複数の試料から新しいU-Pb年代値が得られ、以下の結果が得られた。Tuva-Mongolia ZoneのGargan blockに産する片麻岩および花崗岩類についてはこれまで直接年代値が得られておらず、すべて隣接するロシア南部の地質体との対比で年代が議論されてきた。1)本研究によって、Gargan blockの変成岩から新たに27億年前のU-Pbジルコン年代が得られ、ロシア南部との対比が確定した。2)Gargan blockの変成岩から初めて10億年前のU-Pbジルコン年代が多数得られた。3)さらに若い約8億年前の年代値も初めて確認された。4)同ブロック内には複数の主要な変成作用が起きたことが判明し、中央アジア造山帯が形成される前に存在した個別の大陸塊の形成史の概要が解明された。5)これらの原生代大陸塊は現在地理的に隣接する北東方のシベリア地塊ではなく、むしろ南西方に位置するタリム地塊と近縁であったと推定される。6)下部カンブリア系と推定される層状リン酸塩岩中から微化石の抽出を試み、既に50試料の薬品処理と顕微鏡観察を行ったが、未だ微化石は発見出来ていない。
昨年度までに採取した多数の岩石試料について、特に基盤の花崗岩類とそれらを覆う砕屑岩類からジルコンを分離し、それらのU-Pb年代測定を行う計画を進める。また、火成岩類については、主要元素、微量元素、そして各種同位体の測定を行う。春季および夏季にモンゴル国南部および南西部の中国国境周辺の先カンブリア時代岩石および古生層分布域において、野外地質調査と岩石試料採取を実施する予定である。さらに夏季には分担者が昨年度調査地域であるモンゴル北部および西側に隣接するカザフスタンに赴き、追加試料採取のための野外調査を行う予定である。採取した岩石試料は速やかに日本に輸送し、東京大学の施設を用いて化学組成分析および放射性年代測定を行う。秋/冬季には得られたデータを総合的に評価し、モンゴルの古生代造山運動および中央アジア造山帯の形成過程について新しいまとめを行う。それらの成果を順次、国内外の学会で発表し、また英文論文として国際学術誌に公表する。
すべて 2018 2017 その他
すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (10件) (うち国際共著 6件、 査読あり 8件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (14件) (うち国際学会 13件、 招待講演 3件) 図書 (1件)
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