研究課題/領域番号 |
16F16343
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
伊原 博隆 熊本大学, 大学院先端科学研究部(工), 教授 (10151648)
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研究分担者 |
KHAN HIRA MD NURUZZAMAN 熊本大学, 大学院先端科学研究部(工), 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2016-11-07 – 2019-03-31
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キーワード | 超分子ゲル / 二次キラリティ / ナノ構造体 / π共役系 |
研究実績の概要 |
本研究は、分子配向場を利用して、光学分割を含む高選択的システムを構築することを主目的としている。計画当初は、多孔質無機担体に直接、設計された分子間相互作用点を集積(固定化)する予定であったが、ジヒトロキシナフタレンとトリアジンの共重合反応により、π共役系を容易に無機担体中に導入できる知見が得られ、これに加えて共重合体を熱処理することにより、π共役系相互作用点となるカーボン化が促進され、その結果著しく高い幾何異性に対する選択性が確認されたため、本年度は、この共重合反応に焦点を当て、分子配向場となるカーボンナノ構造体の作製に着手した。具体的な研究内容と成果は以下の通り。 (1)キラルなナノ集合体の作製とナノ形態制御について~グルタミド系両親媒化合物(G-Py+)を用いて、水中での会合状態を透過型電子顕微鏡(TEM)観察ならびに円二色性(CD)スペクトルにより調査した。その結果、G-Py+は直径が数10nmオーダーの繊維状会合体を形成し、また室温付近に存在する相転移挙動に伴って、この温度前後で中空状~らせん状の形態変化が見られること、またCDにより二次キラリティに著しい変化が生じることを確認した。 (2)ジヒトロキシナフタレンとトリアジンの共重合反応~上記のナノ構造体存在下で共重合反応を実施したところ、緑色物質が生成した。この物体について構造調査すると、液体成分に着色物質が存在しないこと、G-Py+の会合形態が維持されていること、共重合体に相当する赤外吸収スペクトルが観察されることなどの結果から、G-Py+会合体上に共重合体が複合していることが示唆された。 (3)複合体の熱処理~200℃、2時間、熱処理を行ったところ、緑色物質は黒色化した。精密な構造分析は今後実施する予定であるが、π共役系となるカーボン化が進行していていると判断した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画では、多孔質の無機担体に直接、設計された分子間相互作用点を集積(固定化)する予定であったが、ジヒトロキシナフタレンとトリアジンの共重合反応により、π共役系を容易に無機担体中に導入できる知見が得られ、これに加えて共重合体を熱処理することにより、π共役系相互作用点となるカーボン化が促進され、その結果著しく高い幾何異性に対する選択性が確認されたため、本年度は、この共重合反応に焦点を当て、分子配向場となるカーボンナノ構造体の作製に着手した。その結果、担体として利用した繊維状会合体上に、ジヒトロキシナフタレンとトリアジンの共重合体が複合できることを確認できただけでなく、200℃での熱処理によって、π共役系となるカーボン化が促進できることを確認した。この知見は、多孔質無機担体を含め、様々な担体に共重合体を固定化できること、さらにはπ共役系カーボン相を導入できることを示しており、今後の研究展開上、きわめて有益な研究成果が得られたと判断した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、分子配向場を利用して、光学分割を含む高選択的システムを構築することを主目的としている。H28年度は、当初計画を変更して、分子配向場となる有機相として、ジヒトロキシナフタレンとトリアジンの共重合反応に着目し、担体上でπ共役系を構築するための基礎実験を実施した。その結果、担体として利用した繊維状会合体上に、ジヒトロキシナフタレンとトリアジンの共重合体が複合できること、さらには200℃での熱処理によって、π共役系となるカーボン化が促進できることを確認した。 そこでH29年度は、この基礎知見をさらに強化するため、様々なナノ形態を有する担体上でのジヒトロキシナフタレンとトリアジンの共重合を実施しナノ構造の構築と制御を行い、またナノ構造体中へのキラリティの転写・増幅・制御を実現することによって、他に例を見ない分子配向場の作製を目指し、研究目標とする高選択的システムの構築のための基盤を築く。
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