本研究は、複雑な混合物系から迅速かつ精密に有用物質を分離精製するための新しい分離剤の開発を目的として、前年度までに確認してきジヒドロキシナフタレンとトリアジナン誘導体の共重合反応によりπ共役系ポリマー系を簡便に導入できる点に焦点を当て、最終年度は同技術の深化ならびに展開力の強化を目指して研究を実施した。 (1)反応機構の解明:重合反応を蛍光スペクトルにより追跡し、ナフタレン系ではポリマー成長中に一時的に蛍光種が生成し、その後無蛍光種に至ることを解明した。また、排除限界クロマトグラフィ法により反応追跡した結果、溶液中にオリゴマーが生成すること、テンプレート上に集積する課程でオリゴマーの溶解度が関係していることを確認した。 (2)タンパク質をナノテンプレートに用いる重合反応:前年度までの成果を下に、β-ラクトグロブリンナノ構造体をテンプレートとして用い、凝集構造を制御することによって、球状から繊維状までのナノ構造複合体を作製することに成功した。 (3)量子ドットをナノテンプレートとする重合反応:当初計画にない新たなチャレンジとして、無機系の量子ドットをナノテンプレートとした重合反応を実施した。ナノドットが反応中に失活しやすいため、より安定なナノドットの探索に時間を要し、当初予想を超えて難航したが、最終的にアントラセン系ポリマーが被覆された複合体の製造に成功した。 (4)導電性ポリマー被覆シリカについて:π共役系ポリマー被覆体を用いた分離機能の確認を目的として、当初目標にはなかったπ共役系ナノカーボンの多孔質シリカ中への導入と多環芳香族類に対する選択吸着について検討した。得られた複合体をカラムに充填し、平面性の高い多環芳香族に対して極めて高い吸着特性を示すことを確認した。
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