研究課題/領域番号 |
16F16345
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
上杉 志成 京都大学, 物質-細胞統合システム拠点, 教授 (10402926)
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研究分担者 |
GOETZE SEBASTIAN 京都大学, 物質-細胞統合システム拠点, 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2016-10-07 – 2019-03-31
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キーワード | ケミカルバイオロジー / RNAバイオロジー / 構造・活性相関研究 |
研究実績の概要 |
本研究の目的はRNAのGグアドルプレックスを認識する化合物の開発と利用である。GグアドルプレックスはDNAやRNA中に存在する安定な構造である。近年、DNAのGグアドルプレックスが遺伝子の転写制御などで重要な働きを行うことが明らかとなっている。しかし、RNAのGグアドルプレックスの研究は進んでいない。その理由の一つは、RNAのGグアドルプレックスを選択的に認識する化合物ツールがないことだろう。我々の研究室ではすでにこの分子の元となる化合物をスクリーニングにより発見している[JACS,2016]。このRGB-1と名づけた分子はRNAのGグアドルプレックスに選択的に結合し、Gグアドルプレックスを安定化させることで、遺伝子の翻訳を抑える。 平成28年度では、まずRGB-1の全合成経路を最適化した。最適化した合成ルートを活かして、RGB-1誘導体を合成した。例えば、鈴木-宮浦カップリングによって様々なチオフェン誘導体を導入した。これらのRGB-1誘導体がGグアドルプレックスに選択的に結合するかどうかを調べた。驚いたことに、RGB-1の活性は安定して認められるものの、合成したRGB-1誘導体には全く活性が認められなかった。 さらに平成28年度では、RGB-1を利用し、RGB-1によって量が減少するタンパク質を探索した。癌関連タンパク質を網羅的に調べたところ、いくつかのタンパク質がRGB-1によって減少した。今後、これらのタンパク質をコードするmRNAにGグアドルプレックスが存在するかどうかを調べる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究の一部は順調に進展している。RGB-1合成展開については、合成展開には成功したものの、活性のある誘導体を見いだすことができなかった。RGB-1の活性は、構造変換に極めて敏感であることが分かった。RGB-1の化学的特性により、合成展開パターンは限られている。今後、さらに合成方法に工夫をするか、合成展開を断念するかを決断しなければならない。 期待が持てるのは、RGB-1自身がツールとして有用な知見を生み出したことである。癌関連タンパク質を網羅的に調べたところ、いくつかのタンパク質がRGB-1によって減少した。現在、これらのタンパク質をコードするmRNAにGグアドルプレックスが存在するかどうかを調べているが、予備実験では、実際にいくつかのmRNAのノンコーディング部位にGグアドルプレックスが存在していると示唆された。RGB-1自身がツールとして有用であれば、類縁体合成の必要性は減少する。
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今後の研究の推進方策 |
癌関連タンパク質を網羅的に調べたところ、いくつかのタンパク質がRGB-1によって減少した。引き続き、これらのタンパク質をコードするmRNAにGグアドルプレックスが存在するかどうかを調べる。実際にいくつかのmRNAのノンコーディング部位にGグアドルプレックスが存在しているとの予備実験の結果を得ており、成果が期待できる。存在するGグアドルプレックスを同定し、詳細にその構造を円二極性分光法などを用いて同定する。 また驚いたことに、RGB-1によって発現が増強する癌遺伝子産物も1種発見した。どのようにして、RGB-1がタンパク質レベルを増強させることができるのか、興味深い。このタンパク質の安定性を調節しているタンパク質を減少させているのかもしれない。今後、この興味深い現象についても追究する。
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