ペロブスカイト太陽電池の高性能化には、光吸収性材料であるペロブスカイト層の開発およびその成膜技術向上に加えて、そこで光吸収により発生する電荷を効率的に取り出すための優れた半導体材料の開発が重要となる。本研究では、正孔の取り出し材料として、独自のp型半導体材料の設計および開発に取り組んだ。 これまでに独自の準平面構造をもつπ共役骨格として開発してきた、酸素架橋型トリフェニルアミン骨格を用いて、これをアズレンを核構造として4つ導入導入したHND-Azleneの置換基効果について検討した。 異なる長さのアルキル基(Me-、Bu-、Hexyl-、2-Ethylhexyl-、およびOctyl-基)をそれぞれ導入した一連のHND-Azulene誘導体を合成した。本研究では、各合成段階で精製方法をさらに改良することで、それぞれの化合物をグラム単位で大量合成する手法を開発した。 得られた標的化合物に対して、サイクリックボルタンメトリおよび大気下光電子分光によるHOMO準位の評価、SCLC法による電荷輸送特性の評価、およびSEMおよびAFMによる薄膜状態の表面観察を行い、これらの基礎物性を検討した。さらに、これらを用いたペロブスカイト太陽電池の作製と特性評価を行った。その結果、1)アルキル鎖を短くしていっても、材料の塗布が十分に可能な濃度での良好な溶解性をもつこと、2)アルキル鎖が短いほど、電荷移動特性が向上すること、3)Me基をもつものは、Bu基までのものに比べて、膜での結晶性が高いことが明らかになり、これらの誘導体の中では、Bu基をもつ誘導体が太陽電池特性として、最も高い効率を示し、18.9%までの効率が向上することが明らかになった。
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