研究課題/領域番号 |
16F16354
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
若井 明彦 群馬大学, 大学院理工学府, 教授 (90292622)
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研究分担者 |
RAJ BHAT DEEPAK 群馬大学, 大学院理工学府, 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2016-11-07 – 2019-03-31
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キーワード | 2015年ネパール・ゴルカ地震 / クリープ性地すべり / 野外調査 / 室内実験 / 数値解析 / 変位予測 / 変位観測 / 有限要素法 |
研究実績の概要 |
2015年に発生したネパール・ゴルカ地震とその余震によって、クリープ性地すべりが多数発生した。本研究は被災箇所の今後の残余リスクの評価ならびに復旧復興計画における斜面対策工法の方針策定のための地すべり斜面のクリープ挙動予測手法の開発と妥当性検証を目的としている。 平成28年度は、新たに開発された解析モデルを用いてクリープ性地すべりの解明に取り組んだ。この解析モデルは斜面内の地下水位変動を考慮した、地すべりのクリープ挙動を評価するための弾粘塑性有限要素法である。これにより、地下水位の変動により生じる斜面の変形や応力分布の変化をシミュレートすることができる。 まずはこのモデルの妥当性を確認するため、群馬県高山村戸室地区のクリープ性地すべりに対して本解析モデルを適用した。解析計算を行うにあたり現地調査を行い、地すべりを引き起こしている層から土試料を採取した。採取した土試料は各種の力学試験を行い強度定数を算出した。これと並行して、地すべり地で計測されている地下水位などのデータを基に必要なパラメータを決定し、解析計算を行った。 計算結果と実測値を比較すると、斜面変形の進み方および変形量などに整合性がみられることから計算結果は良好であると言え、解析結果に一定の有用性を確認することが出来た。将来的にはネパール・ゴルカ地震により引き起こされた種々のクリープ性地すべりに対しても、同様の手法を用いたいと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
昨年度は解析計算クリープ性地すべりの解析計算を行った。クリープ性地すべりの見られる群馬県高山村戸室地区で土試料を採取した。採取した土試料に対して各種土質試験を行い解析計算に必要な材料パラメータを得たほか、地すべり現場で計測されている地下水位や地すべりの変位量などのデータを入手した。これらを用いて変位速度と局所安全率との間にある関係を確認した。地すべりをモデル化するにあたり、地すべり地点の縦断面に基づいた2次元有限要素メッシュを作成した。このメッシュにはボーリング調査により得られた地層構造を反映している。 提案手法の妥当性を検討するために群馬県高山村戸室地区の地すべりに対して、クリープ性地すべりに対して提案された数値解析手法(弾粘塑性有限要素法)を適用した。その計算結果は実測値とよく一致している。したがって、提案された解析モデルはクリープ性地すべりの挙動や破壊メカニズムの研究に役立てられることが期待できる。 この手法に基づいて、今後は動的弾粘塑性の構成モデルを開発し、2015年のネパール・ゴルカ地震とその余震により引き起こされたクリープ挙動の研究を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は力学特性を測定するために不可欠な専用のクリープ試験機の製作を行う。同試験機は、実際に土試料を入れて載荷するためのせん断箱、せん断力を与える動力機構および荷重制御の条件下でクリープ変位を許容するような専用の制御機構、せん断量を測定するための変位計測機構など、の部品から構成される。 また、この試験器を用いて実際の地すべり斜面等から採取した土試料を用いた試験を行うなどして、開発した試験器の有効性を検証する。同時に、これまでに開発した地すべり機構解析のための材料構成則とそれを実装した動的弾塑性有限要素解析コードの開発を進め、解析プログラムの原型を完成させる。そして基本的ないくつかのケースに対する解析結果の例示を行えるようにする。 これらと並行して、ネパール地震により発生した地すべり斜面のクリープ挙動を測定するための現地調査を行う。斜面のクリープ移動の誘発の主因となる土質材料の力学特性と斜面全体の変形挙動とを測定し、これらの結果を踏まえて、申請者らの開発する解析プログラムが動作できるようにする。
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