研究実績の概要 |
2015年に発生したネパール・ゴルカ地震とその余震によって、クリープ性地すべりが多数発生した。本研究では被災箇所の今後の残余リスクの評価ならびに復旧復興計画における斜面対策工法の方針策定のための地すべり斜面のクリープ挙動予測手法の開発と妥当性検証を目的としている。 研究期間中、斜面内の地下水位の上下動に連動した斜面変動を再現する2つの数値解析モデル(モデルA,モデルBと呼ぶ)を用いた2次元弾粘塑性有限要素法を開発した。この解析モデルはいずれもひずみ速度を直接操作する定式化を行っており、地すべり斜面に存在する粘土質のすべり面に発生する変形を再現するのに有用である。この手法の妥当性を検証するため、群馬県高山村戸室地区のクリープ性地すべりに対して再現解析を行ない、モデルA、モデルBともに再現性に一定の妥当性を得た。 平成29年度はネパール国内の9つの地すべり斜面に対して現地調査を踏まえた検討を行った。この調査では現地で土試料を採取し、種々の力学試験を行うことで解析計算に用いる材料パラメータに関する基礎的な知見を得た。 平成30年度はクリープ性地すべりの機構および、地すべりを引き起こす要因について検討するため、この解析モデルを用いて仮想の斜面に対するパラメトリックスタディに取り組んだ。また、パラメトリックスタディと並行して、昨年度調査を行った地すべりに対して本解析手法による再現解析を行ったほか、本手法と地震応答解析と組み合わせた解析手法の開発にも取り組み、地震動がクリープ性地すべりに与える影響について検討を行った。
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