研究課題/領域番号 |
16F16357
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研究機関 | 公益財団法人川崎市産業振興財団(ナノ医療イノベーションセンター) |
研究代表者 |
片岡 一則 公益財団法人川崎市産業振興財団(ナノ医療イノベーションセンター), 川崎市産業振興財団, センター長 (00130245)
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研究分担者 |
XIE JINBING 公益財団法人川崎市産業振興財団(ナノ医療イノベーションセンター), 川崎市産業振興財団, 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2016-10-07 – 2019-03-31
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キーワード | 薬剤送達システム / タンパク質 / 抗体 / 高分子 / ナノキャリア |
研究実績の概要 |
本研究では、高分子とタンパク質・抗体との複合体(複合体型ナノキャリア)からなるナノ粒子をドラッグデリバリーシステム(DDS)のキャリアとして、薬剤を標的とする疾患部位にのみ送り届ける技術の開発を目的としている。 本年度は、本システムのPOCを得るために、モデルタンパク質としてBSA、もしくは近年高分子薬剤として注目を集めている抗体(IgG)を封入したナノキャリアを構築するために、1) 高分子の合成、及び2) タンパク質、抗体の新規修飾法の開発に取り組んだ。具体的には、高分子として生体適合性の高いことが知られているポリエチレングリコール(PEG)とカチオン性のポリアミノ酸であるポリリシン(PLys)からなるブロック共重合体(PEG-PLys)を新規に合成した。得られた高分子はプロトン核磁気共鳴法 (1H-NMR)及び高速液体クロマトグラフィー (HPLC)より単峰性で、PLysの重合度が50であることを確認した。またBSAやIgGの修飾法に関しては、既存の方法では標的物質のアミノ基を化学修飾することで、表面電荷をネガティブにする方法論が主であった。しかしながら既存の方法では、薬剤リリース後にも修飾した分子が結合しているために、薬効に影響が出ることが問題となっていた。そこで本研究では、同様にアミノ基を化学修飾するが、リリース後には修飾分子が自動的に開裂する新規チャージコンバージョン分子を開発した。修飾したBSA, IgGと合成した高分子を混合しナノキャリアを構築後、動的光散乱測定(DLS)及び透過型電子顕微鏡(TEM)観察を行ったところ、直径40 nmで短分散な粒子であることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
高分子の分子設計からin vitroおよびin vivoでの機能評価、さらには疾患動物モデルにおける治療効果の確認へと展開される本研究計画において、下記の特筆すべき成果を得ることに成功した。 1) タンパク質、抗体を封入するために必要不可欠な高分子を構築した。 2) タンパク質、抗体デリバリー際に問題となる修飾法を改善するために、新しいチャージコンバージョン分子を合成することに成功した。 3) 上記の新規チャージコンバージョン分子を修飾したタンパク質、抗体と高分子を混合することで、直径40 nmで単分散なナノ粒子を調製することに成功した。
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今後の研究の推進方策 |
「現在までの達成度」に記述した様に、本研究は当初の計画以上に進展していると自己評価される。したがって、今後の研究については、当初の計画に前倒しで推進して行く予定である。具体的には、モデルマウスを準備し疾患治療へと展開する。前年度までに構築したナノ粒子からの薬剤のリリース試験を評価する。さらに膵臓癌細胞(BX-PC3)を用いて細胞への取り込み能および薬剤活性について共焦点顕微鏡等を駆使して評価を行う。併せて、上記細胞を同所移植した膵臓癌モデルマウスを作成し、体内動態および癌への集積性を評価する。さらにはナノキャリアにリガンド分子を装着し、脳へのデリバリーについても併せて検討する。
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