研究課題/領域番号 |
16F16370
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
勝木 淳 熊本大学, パルスパワー科学研究所, 教授 (80233758)
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研究分担者 |
LIM SOOWON 熊本大学, パルスパワー科学研究所, 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2016-10-07 – 2019-03-31
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キーワード | 大電力パルスマイクロ波 / 仮想陰極発振方式 / 細胞への影響 / 癌治療 / パルスパワー |
研究実績の概要 |
本研究課題の目的は,大電力パルスマイクロ波(HPM)の生体への影響を明らかにすることである。このために,H28年度は,仮想陰極発振方式のHPM発生装置と動物細胞試料へのHPM照射室から成る実験システムの設計と製作を行った。HPM装置は,真空中の大電力電子ビームの不安定性を利用して電磁波発振を行う仮想陰極発振方式であり,受入れ教員が所有する充電エネルギー15kJの誘導性エネルギー蓄積方式パルスパワー電源に接続して駆動する。 装置設計にあたり,事前にHPMの専門家である長岡技術科学大学・江教授を訪問してHPM装置の最適構造について指導を受けた。その上でまず,周波数と瞬時電力を調整可能なHPM発生部と,導波管および生物資料へのHPM照射室までを含めた構造設計のために,購入した粒子ビーム・電磁界統合解析ソフトウェアを用いて,パルス大電力電子ビームと電磁波伝搬を含めたシミュレーションを行った。シミュレーションに基づいて設計した,電子ビーム発生部,電磁波導波管,試料への照射室を製作した。また,HPM装置を駆動する既存のパルスパワー電源の特性を最適化するために,汎用回路シミュレーションソフトウェアを用いて回路インダクタンスやオープニングスイッチとして用いる細線溶断スイッチなどのパラメータを決定し,改造した。パルス高電圧と大電流測定器,およびHPMの測定器を使用条件を考慮して設計・製作した。受入教員が所有する重コンクリート室内に装置を組み立てて設置した。 さらに,H29年度以降に計画している生物試料へのHPM照射実験のために,生物研究を専門とする教員の指導を受けながら動物細胞培養や生化学解析など生物実験手法の修得を開始した。以上の成果は,H29年度以降に計画しているHPM装置の特性評価と動物細胞へのHPM照射実験につながるものである。なお,以上で述べたのHPM装置の開発工程を国内学会で報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H28年度の計画は,仮想陰極発振方式のHPM発生装置と動物細胞試料へのHPM照射室から成る実験システムの設計と製作を行うことであり,装置設計,各要素の製作,既存パルスパワー電源の改造など,生物試料へのHPM照射実験システムの構築を予定通りに完了した。さらに,H29年度以降に計画している生物試料へのHPM照射実験のために,生物研究を専門とする教員の指導を受けながら動物細胞培養や生化学解析に関する実験手法の修得を開始した。 概ね計画どおりに進展し,H29年度以降に計画しているHPM発生装置の特性評価と生物試料へのHPM照射実験につながるものである。
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今後の研究の推進方策 |
H28年度は,HPM発生装置と生物試料への照射室からなる実験装置の構築を行った。また,物細胞培養や生化学解析に関する実験手法の修得を開始するなど,おおよそ計画通りに進んだ。H29年度は次のように当初計画通りに進める予定である。 (1)HPM装置の特性評価,(2)ヒト子宮頸がん由来の培養細胞にHPMを照射し,細胞死,細胞増殖活性,DNA損傷,ATP合成活性などの生体応答解析,(3)照射するHPMの周波数や瞬時電力を変化させ,生体応答との関係を網羅的に調査,(4)他の動物細胞へのHPM照射と生体応答解析,(5)電磁界解析ソフトウェアを用いて,HPMの生体への電磁的な作用を理解。 これらの課題を,受入教員と連携して研究活動をしている生物・医薬系教員の意見を仰ぎながら進める。また,得られた成果は国際誌に論文投稿し,国内外の学会で発表する。
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