研究課題/領域番号 |
16F16373
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研究機関 | 高知工科大学 |
研究代表者 |
川原村 敏幸 高知工科大学, システム工学群, 准教授 (00512021)
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研究分担者 |
DANG Tai Giang 高知工科大学, 総合研究所, 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2016-10-07 – 2019-03-31
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キーワード | 高移動度トランジスタ(HEMT) / コランダム構造酸化物 / 超広バンドギャップ / ミストCVD / ヘテロ構造 / MODFETs |
研究実績の概要 |
昨年度主に、α-Cr2O3およびα-(CrxGa1-x)2O3の作製と、α-(AlxGa1-x)2O3へのSiドープによる導電膜の形成に成功した。またα-(AlxGa1-x)2O3のAl/Ga組成比に伴う結晶長変化とバンドギャップ変調に関する調査やα-(AlxGa1-x)2O3系ヘテロ構造の測定サンプル作製を行った。 1) α-Cr2O3およびα-(CrxGa1-x)2O3の作製:ミストCVDではアセチルアセトナート系溶剤をよく利用する。しかしCr系試薬は非常に安定で溶解できる溶媒が見出せなかった。そこで水やメタノールに容易に溶解できるクロム酸アンモニウムに溶剤を変更したところα-Cr2O3の作製に成功した。加えてGaとの混晶α-(CrxGa1-x)2O3の作製に成功した。これらの成果を論文化しているところである。 2) α-(AlxGa1-x)2O3の導電化:これまでSnCl2を用いてSn4+のドープによるα-(AlxGa1-x)2O3の導電化を進めてきた。ところが再現性が低く、またその理由が原料の安定性に問題があるためであると推定されたが明確な原理の解明には至らなかった。そこでクロロ(3-シアノプロピル)ジメチルシラン(C6H12ClNSi)を用いてSi4+のドープによるα-(AlxGa1-x)2O3の導電化を進めたところ導電化に成功した。 3) α-(AlxGa1-x)2O3系材料のベガード則の確認:第3世代ミストCVDを用いてα-(AlxGa1-x)2O3系材料のAl/Ga組成比に伴う結晶長変化とバンドギャップ変調に関する調査を行った。4) α-(AlxGa1-x)2O3系ヘテロ構造のTEMサンプル作製:6つの異なるα-(AlxGa1-x)2O3(x=0.71~0)からなるα-(AlxGa1-x)2O3系ヘテロ構造のTEMサンプルをFIBを用いて作製した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本プロジェクトは導電性α-(AlxGa1-x)2O3およびα-(CrxGa1-x)2O3系薄膜を用いた、格子不整合が小さいが大きなバンドオフセットをもつα-(AlxGa1-x)2O3/α-(CrxGa1-x)2O3ヘテロ構造による高移動度トランジスタ(HEMT)の作製である。これまでα-(AlxGa1-x)2O3の作製に成功していたが、①α-(AlxGa1-x)2O3の導電化、②α-(CrxGa1-x)2O3の作製は出来ておらず、加えて③α-(AlxGa1-x)2O3/α-(CrxGa1-x)2O3ヘテロ構造やパターン形成など多くの課題があった。それにもかかわらず、①②を達成させ、この最終年度残り3ヶ月に③α-(AlxGa1-x)2O3/α-(CrxGa1-x)2O3ヘテロ構造やパターン形成などα-(AlxGa1-x)2O3/α-(CrxGa1-x)2O3系HEMT作製に集中することが出来る。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度残り5ヶ月にα-(AlxGa1-x)2O3/α-(CrxGa1-x)2O3系HEMT作製を達成させる為、①デバイス形成プロセスの構築と②HEMT構造の最適化を試みる。①では、α-((Al, or Cr)xGa1-x)2O3系薄膜のパターン形成プロセスの選択や保護膜の選択と各種電極形成に関する研究を行う。α-((Al, or Cr)xGa1-x)2O3系薄膜のパターン形成プロセスとして、α-((Al, or Cr)xGa1-x)2O3系薄膜の耐薬品性が非常に高く、ウェットエッチングではパターン形成のための保護膜選択が困難である。その為ドライエッチングを選択予定である。それに伴いドライエッチングに適した保護膜の選択を行う。またショットキー電極としてAgOを検討しており、電極パターンはリフトオフプロセスにより形成予定である。② HEMTでは界面における電子の濃度変化および高濃度化が鍵となる。そのため電子を集中させるための構造的な工夫が必要となる。その為一般的な均一にドープされたα-(AlxGa1-x)2O3:Siとii)Siをデルタドープしたα-(AlxGa1-x)2O3:δSiを用いた2つの構造を検討する予定である。この際操作変数として膜厚、組成比などがあるが、時間が4ヶ月と短い為、それぞれの値を固定して取り組み電気特性を評価する。最終的に世界に先駆けα-Ga2O3系HEMTを達成させ、次世代パワーデバイスの指標となる結果を残す。
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