研究課題/領域番号 |
16F16383
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研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
岩澤 康裕 電気通信大学, 燃料電池イノベーション研究センター, 特任教授 (40018015)
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研究分担者 |
GHOSH SHILPI 電気通信大学, 燃料電池イノベーション研究センター, 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2016-11-07 – 2019-03-31
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キーワード | ベンゼンの直接酸化反応 / フェノール合成 / アルカリ金属/ゼオライト触媒 / アルカリ土類金属/ゼオライト触媒 |
研究実績の概要 |
アルカリ金属及びアルカリ土類金属/ゼオライトが、触媒反応の中でも困難な反応とされるベンゼンのフェノールへの直接酸化反応をN2O共存下で高選択的に進行させることを研究者らは発見した。当該年度において、アルカリ金属、アルカリ土類金属、ゼオライトの種類のスクリーニングや反応温度、金属担持量の反応条件の最適化を行った。 ゼオライトをβに固定し、アルカリ金属にK, Rb, Csをアルカリ土類金属にMg, Caを用いてイオン交換法によりゼオライトに担持し、ベンゼンの直接酸化反応に用いた結果、どの触媒も高い活性(ベンゼン転化率12.3-18.9%)と高いフェノール選択性(99.0%)を示した。特にCsとRbを用いると、N2O消費量/フェノール生成量の比がそれぞれ1.04, 0.90とフェノール合成反応が化学量論的に進行しており、N2Oの自己分解を抑制していることが分かった。また、ゼオライトとしてβの他にモルデナイト、ZSM-5, Yも用いたがβ以外のゼオライトではベンゼン転化率が<1%と著しく低く、またN2Oの自己分解も著しく、ゼオライトにはβを用いることが本反応において重要であることがわかった。 次にRb/β触媒を用いて反応条件の最適化を行った。Rb担持量1-8wt%の範囲で、1 wt%以上で活性が横ばいになり、1wt%が最適量であった。反応温度200-400℃の範囲で反応温度が300℃に達すると反応が進行しだし、340℃でベンゼン転化率が33.5%であったが400℃を超えるとベンゼン転化率が43.7%に上がるがフェノール選択率が93%に減少し、また、N2Oの自己分解が著しく起こった。 XRD, XAFSによりRb/βの状態を調べたところ、反応前後でRb, βの状態に有為な変化は見られず反応条件において高い耐久性が示された。 これらの成果を日本化学会第97春季年会において口頭発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度の研究実施計画に立てた通り、アルカリ金属/ゼオライト触媒及びアルカリ土類金属/ゼオライトを用いたベンゼンのフェノールへの直接酸化反応における触媒のスクリーニング及び反応条件の最適化を行い、高活性なアルカリ金属/ゼオライト触媒を選定し、さらに最適な反応条件を決定した。 また、翌年度の計画にあるXAFSの分析の一部を当該年度でも行い、翌年度の計画にあるアルカリ金属/ゼオライト触媒を用いたベンゼンの酸化反応における触媒活性構造を測定していくに必要な知見を得た。 以上より当該年度の進捗状況をおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
当該年度でアルカリ金属/ゼオライト触媒の選定と反応条件の最適化が出来たので、これらの知見を基にバイメタル化等によりさらに高い活性を持つ触媒開発を行っていく。また、これらの触媒を用いて平成29年度の研究計画にあるメタンとベンゼンからの有用炭化水素類の合成する選択酸化反応の開発も進めていく。さらにXAFS, XPS, ラマン, CO2-TPDなどの分析により酸塩基触媒であるアルカリ金属/ゼオライト触媒を用いたベンゼンの酸化反応における触媒活性点の構造解析を行い、一般的な酸化還元触媒で唱えられている触媒反応機構との異なる触媒反応メカニズムを明らかにしていく。
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