研究課題/領域番号 |
16F16383
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研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
岩澤 康裕 電気通信大学, 燃料電池イノベーション研究センター, 特任教授 (40018015)
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研究分担者 |
GHOSH SHILPI 電気通信大学, 燃料電池イノベーション研究センター, 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2016-11-07 – 2019-03-31
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キーワード | アルカリ金属/ゼオライト触媒 / フェノール合成 / メタンの直接酸化反応 / X線分光 / DFT計算 |
研究実績の概要 |
これまでにアルカリ金属/ゼオライト及びアルカリ土類金属/ゼオライト触媒のなかでも大きいイオン半径を有するRbとCsをβゼオライトにイオン交換法で担持した、Rb/β及びCs/β触媒が、触媒反応の中でも困難な反応とされるベンゼンのフェノールへの直接酸化反応をN2Oを酸化剤として用いることで高選択的に高い転化率をもって進行させることを見出してきた。 当該年度では、酸塩基触媒であるRb/βやCs/βにより酸化反応が進行するという特異な反応機構の解析を主目的として、X線分光測定や理論計算により反応機構の解析を行った。 XPS, XAFSによりRb/βとCs/β触媒のアルカリ金属の構造を調べるとRb及びCsは1価のシングルサイトとして存在していることが分かり、その電子状態及び配位構造はCs2CO3とは大きく違っていることが確認された。そこでβ細孔中に固定されたCsイオンを活性構造と仮定して、DFT計算から反応機構解析を行った結果、ベンゼンはCsイオンとσ結合を形成して、N2OはCsイオンにサイドオンで同時吸着した、通常の酸化還元触媒では見られないような反応中間体を形成する機構が推定された。 以上から、N2Oを酸化剤に用いたベンゼンのフェノールへの直接反応において、Rb, Csのように大きいイオン半径を有する金属イオンを触媒活性サイトとして用いることで、通常の酸化反応で見られるような金属種の酸化過程を経ずに、金属シングルサイト上で特有の反応中間体を形成して協奏的に反応が進行できるような反応場を提供するといった前例のない新しい触媒作用の開発に成功した。 また、Cs/βを用いたC-H結合の活性化として同じく困難な触媒反応として知られるメタンの直接酸化反応も行った。従来の酸化還元触媒に比べると活性はまだ劣るがメタンから直接、酢酸などの有用な物質を得ることに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度の研究実施計画で予定していたX線分光などの種々のキャラクタリゼーションを用いたCs/β特有の反応機構解析に成功した。また、Cs/βを用いたC-Hの活性化反応として、同じく困難な触媒反応のひとつのメタンの直接酸化反応もトライしており、一部成果が出てきている。 以上より当該年度の進捗状況をおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
当該年度でCs/βによる反応機構解析に成功したので、残り半年間でアルカリ金属及びアルカリ土類金属のイオン半径などの制御因子と活性の相関を明らかにし、高活性なフェノール合成触媒の開発に必要となる知見を得る。 また、アルカリ金属及びアルカリ土類金属をベースとしたゼオライト触媒を用いたメタンの直接酸化触媒作用の開発を目指す。高活性な触媒開発ができ次第、メタンの直接酸化反応についても同様にCO2-TPDやin-situ XAFS, XPS, ラマン分光などの分析により触媒機構を同様に調べていく。
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