研究課題
メダカ科魚類のいくつかの種に見られる‘腹鰭保育’は,腹鰭の伸長や卵巣卵の同期発達などの形質が同時進化することで機能する複合適応形質であるが,その進化の遺伝基盤は不明である.本研究は,腹鰭保育を行うエバースメダカ(Oryzias eversi)と,その近縁種で非腹鰭保育種であるドピンドピンメダカ(Oryzias dopingdopingensis)を利用して,腹鰭保育の進化の遺伝基盤を解明することである.まず,野外採集によって得られた野生個体の産卵形質(腹鰭長,総排泄口のくぼみの大きさ,および産卵間隔)の比較を行う.次いで,雑種F2の表現型のタイピングも行い,腹鰭保育に関わる形質の量的遺伝学的解析を行うと共に,腹鰭保育を制御する遺伝子座のマッピングも行う.本年度は,エバーシメダカとドピンドピンメダカを親魚として雑種F2個体を作出し,各F2メスの体の腹鰭長,総排泄口のくぼみの大きさ,および産卵間隔の計測・計数を行った.さらに,各F2メスから抽出したゲノムをddRAD-seqにかけて,QTLマッピング用のSNPマーカーの連鎖地図も求めた.これらをもとに,Rqtlを用いて腹鰭保育を制御する形質のマッピングを行ったところ,腹鰭長に関して非常に高いLODスコアを示す遺伝子座を特定することができた.この遺伝子座は日本のメダカの24番染色体に相当する染色体上に存在する.さらに,本交配とは別に,ドピンドピンメダカの野生個体の性連鎖マーカをddRAD-seqを用いて特定したところ,ドピンドピンメダカではその染色体が性染色体に相当するが判明した.腹鰭はメスでのみ伸長する形質であるため,性特異的形質の進化における性染色体の役割に関して興味深い視座が得られた.
2: おおむね順調に進展している
F1メス個体の性比が大きくオスに偏ることから,F2個体の作出が難しい状況であったが,結果的にマッピングに足だけの多数のF2を得ることができた.計画通りQTLマッピングも終了し,計画に遅れは生じなかった.
QTLマッピングで特定された腹鰭長を制御するゲノム領域を中心に,どのような遺伝子が存在するか,日本のメダカゲノムのアノテーション情報を用いて調べていく.さらに,RNA-seqを用いて候補遺伝子を絞り込んでいき,最終的にはゲノム編集技術で遺伝子の特定を目指す.
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Molecular Phylogenetics and Evolution
巻: 118 ページ: 194-203
10.1016/j.ympev.2017.10.005
The Biological Magazine Okinawa
巻: 55 ページ: 1-17
http://www.cc.u-ryukyu.ac.jp/~yamahira/