本年度は、研究は以下の2つの課題に取り組んだ。1つ目は、前年度に確保したサンプルの解析を行い、Myb305遺伝子の発現調節により発現変化する遺伝子ネットワーク解析を行った。その結果、1)Myb305転写因子の発現抑制体の果実では、成熟果実となっても花弁の老化・離脱が観察されなかったこと、柱頭の老化・離脱が観察されなかった。通常、これらの器官では果実発達に伴って、基部の細胞層の細胞死が起こり、その部分に離層が形成され、器官離脱が起こる。この細胞死は植物ホルモンの一種エチレンが関与することが知られている。これらの情報も総合して考えると、Myb305転写因子は着果から果実発達過程において、エチレンの生合成や感受性の制御に関わっている転写因子であると考えられる。2)さらに、Myb305転写因子の発現抑制体の生育を観察すると野生型に比べて軟弱傾向が見られ、植物体の直立性が弱い性質を示した。そこで、茎葉部組織へのリグニン蓄積を観察したところ、Myb305転写因子の発現抑制体では、リグニン蓄積の減少傾向が認められた。これらの観察結果から、Myb305転写因子は茎葉発達過程のリグニン生合成の制御に関わっている転写因子であると考えられる。以上のことより、Myb305転写因子はエチレンの生合成もしくは感受性の制御を介して、トマトの果実発達や茎葉発達の影響を及ぼしていると考えられる。2つ目は、得られた遺伝子発現データとこれまでに得られた成果を取りまとめて、原著論文作成に取り組んだか、完成には至っていない。2019年度末を目指して進めている。
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