高原子価のロジウム触媒に対して最適なカルボン酸として、ビナフチル骨格を基盤としジアリールホスフィンオキシド部を導入した最適なものを決定した。最適化されたキラルカルボン酸を利用することで、脂肪族アミンを配向基として利用し、二つの芳香環のエナンチオトッピックな炭素-水素結合のうち片方を選択的に活性化することに成功した。ジアゾマロネートとのC-Hアルキル化反応は効率よく、かつ、高い立体選択性でアルキル化体が得られた。生成物は、反応条件下、ラクタム環を形成しており、脱炭酸反応と組み合わせる事で、高エナンチオ選択的なイソキノロン合成法として有用である。開発した反応の有用性を実証するために、不斉四級炭素中心を有するNMDAアンタゴニストFR115427の触媒的不斉合成をおこなった。
また、本研究の最終目的である高原子価のコバルト触媒に対して有効なキラルカルボン酸についての探索も行った。当初の想定とか異なり、ロジウム触媒で最適化したキラルカルボン酸は有効ではなかったが、面不斉を有するフェロセニルカルボン酸を新たに設計し検討した結果、カルボン酸オルト位に適度なサイズの芳香環を導入する事で良好な選択性が発現する事を見いだした。キラルカルボン酸と高原子価コバルト触媒を組み合わせたハイブリッド型の触媒を利用することで、チオアミドのβ位の炭素-水素結合の不斉識別が可能となった。二つのメチル基のうち片方を選択的にC-Hアミノ化することで不斉四級炭素を有するβ-アミノカルボニル化合物の効率的な不斉合成法を確立する事に成功した。
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