研究課題
筋肉増強をめざし、筋量を負に制御するマイオスタチンに対する高阻害活性ペプチドの創製を試みている。マイオスタチン阻害活性を示すことが判明している23残基のマウスマイオスタチンプロドメイン由来ペプチド1を基盤に、アラニンスキャンを実施し、配列中に含まれる疎水性アミノ酸残基がいずれも重要であることを明らかとした。これらの疎水性残基に着目した構造活性相関研究を遂行し、N末端から18番目のロイシン残基をイソロイシン残基に変換することで有意に阻害活性が向上することを見出した。また、アラニンスキャンにより評価できなかった配列中央のアラニンに対し、種々のアミノ酸の導入を試みた結果、各種アミノ酸の導入が可能であることが示唆され、特にトリプトファン、バリン、グルタミン酸残基の導入時において高い阻害活性を示すことを明らかにした。以上の知見を、既に報告(ChemMedChem, 2016, 11,845)済みの、N末端トリプトファン残基を2-ナフチルオキシ酢酸に置換したペプチドに組み込むことで、上述のペプチド1よりも約11倍高い阻害活性を示す新規ペプチド2の獲得に成功した。さらに、本ペプチド2を基盤に、環状化による活性向上を試みる研究に着手した。N末端とC末端を繋げることによる環状化ではなく、アラニンスキャンにより活性に重要でない残基の側鎖同士を架橋する部分環状化ペプチドの創製に関して検討を行った。その結果、ペプチドの末端部に近い領域をジスルフィド結合により環状化(固定化)することで高活性化できる知見を得た。引き続き環状構造の最適化を進めていく。
2: おおむね順調に進展している
高阻害活性を示すペプチド2の獲得に成功し、更に、環状化による高活性化につながる知見を得ることができた。ペプチド2を用いることで、ペプチドの阻害活性発現に関わるマイオスタチン結合様式解明に向けた研究の進展が期待できる状況となっている。
阻害ペプチドとマイオスタチンとの共結晶化に向けた取り組みを開始し、詳細なペプチドの結合様式解明を進めていく。また、ペプチドの環状化における構造最適化を実施し、動物における筋肉増強作用の確認と投与量の低減を検討していく。
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