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2016 年度 実績報告書

アクチンと膜ナノドメインの協働による炭疽菌毒素の細胞侵入:1分子観察による解明

研究課題

研究課題/領域番号 16F16414
研究機関京都大学

研究代表者

楠見 明弘  京都大学, 物質-細胞統合システム拠点, 教授 (50169992)

研究分担者 LIU AN-AN  京都大学, 物質-細胞統合システム拠点, 外国人特別研究員
研究期間 (年度) 2016-11-07 – 2019-03-31
キーワードラフト親和性受容体 / 受容体会合 / 安定ナノラフト領域 / アクチン重合 / シグナル変換 / 炭疽菌毒素PAサブユニット / 細胞内侵入
研究実績の概要

本研究の目的は、外国人特別研究員のLiu博士が世界最速・2色同時の1分子追跡法を用いた研究から得た作業仮説、すなわち、「ラフト親和性受容体では、受容体会合、安定ナノラフト領域形成、アクチン重合の3つの過程が協働的にはたらいて、シグナル変換と受容体の細胞内取込みを起こす」という仮説の成否を検証し、解明を進めることである。
具体的には、『炭疽菌毒素の細胞内侵入の初期過程』を研究パラダイムとする。毒素の細胞内への取り込みを担うサブユニットProtective Antigen(PA)が、膜貫通型受容体CMG2またはTEM8に結合すると、受容体からの細胞内シグナルが誘起され、毒素が結合した受容体は細胞内に取り込まれる。この過程と分子機構の解明を目指す。毒素の細胞内侵入は、細胞膜の様々な生理機構を乗っ取ることによって可能になっており、侵入機構の解明によって、細胞膜(細胞骨格まで含めて)の生理機構の解明が大きく進展し、生物学・基礎医学全般に大きく貢献することが期待できる。
本年度の研究では、細胞膜上でのPAの2量体から5~6量体への成長、ラフト脂質間相互作用による成長促進、それらの会合体が核となって形成されるラフト領域とそこへ出入りする分子の動態、などの検討を進めた。特に、ガングリオシドのGM1とGM3がPA会合体と共局在する時間は、それぞれ0.3秒程度と0.1秒程度と過渡的であり、ラフト相互作用は両者に働くが、それに加えてGM1は、糖鎖の部分でPAかつ/またはPA受容体との直接の分子間相互作用がある可能性を示した。このようにPA会合体が誘起するラフトは非常に小さく、ラフト脂質が高速で出入りする動的ラフトであることが分かりつつある。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本年度の研究では、ほぼ予定通り、以下の検討をおこない、研究の進展をみた。
(1) 本年度は、PAとラフト親和性のガングリオシドGM1あるいはGM3との2色同時1分子追跡を行い、2量体から7量体の会合体に、これらのラフト脂質がリクルートされる様子を1分子観察した。非常に面白いことに、GM1とGM3はPA会合体にリクルートされ、それぞれ0.3秒程度と0.1秒程度PA会合体と共局在滞在することが分かった。この細胞では、内在性のGM1が少ないが、GM3は多いため、滞在時間の差は、内在性分子の数が違うことに由来する可能性がある。この可能性を調べるために、現在、GM3合成酵素を阻害した細胞を作製中である。これができれば、リクルートされる機構、滞在時間の決定機構が解明できると期待される。それで、平成29年度にも、本研究は継続する予定である。
(2) 小さなPA会合体が、その中や周辺に誘起するラフトは非常に小さく、ラフト脂質が高速で出入りする動的ラフトである可能性が高い(Suzuki et al. Nat. Chem. Biol. 2012)。このような動的ラフトがPAの小会合体の融合を担っている可能性を探求した。2量体ラフト2個が4量体ラフトを形成する過程、3量体ラフトと単量体が4量体を形成する過程、などが詳しく分かりはじめた。そこで、本課題も、来年度に継続予定である。
(3) 受容体取り込みの重要ステップの一つは受容体のユビキチン化であると考えられている。ユビチキン化の進行を1分子観察する方法の開発を進めている。

今後の研究の推進方策

本年度に進んだ方法論開発と研究結果に基づき、今後は以下のように研究を推進する。
(1) 本年度の研究で、ガングリオシドのGM1とGM3はPA会合体にリクルートされ、それぞれ0.3秒程度と0.1秒程度PA会合体と共局在することが分かった。これは、ラフト相互作用は両者に働くが、それに加えてGM1は、糖鎖の部分でPAかつ/またはPA受容体との直接の分子間相互作用がある可能性がある。これを解決するため、本研究をさらに継続する。
(2) 小さなPA会合体が、その中や周辺に誘起するラフトは非常に小さく、ラフト脂質が高速で出入りする動的ラフトである可能性を探求する。さらに、4量体や5量体の形成過程と、それに関わる分子間相互作用を解明する。
(3) 受容体取り込みの重要ステップの一つは受容体のユビキチン化であると考えられている。ユビチキン化の進行を1分子観察する方法の開発を進める。
(4) さらに当初の予定通り、以下の解明を進める。4-1) PA会合体では、ラフト依存的にアクチン線維の重合が開始する可能性があり、それを明らかにする。そのため、PA会合体へのN-WASPとArp2/3のリクルート過程と機構を、1分子イメジング追跡で詳しく検討する。4-2) PA会合体の細胞内取り込み過程を、1分子感度で検討する。同時に、PAの細胞内取込みに、アクチン重合が関与するかどうかを調べる。
これらの検討によって、細胞膜シグナルにおけるナノラフト領域とアクチン膜骨格との相互作用と機能の解明を進める。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2017 2016

すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件)

  • [雑誌論文] Raft-based sphingomyelin interactions revealed by new fluorescent sphingomyelin analogs2017

    • 著者名/発表者名
      M. Kinoshita, K.G.N. Suzuki, N. Matsumori, M. Takada, H. Ano, K. Morigaki, M. Abe, A. Makino, T. Kobayashi, K.M. Hirosawa, T.K. Fujiwara, A. Kusumi, and M. Murata
    • 雑誌名

      J. Cell Biol.

      巻: - ページ: -

    • DOI

      10.1083/jcb.201607086

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] Raft-based interactions of gangliosides with a GPI-anchored receptor2016

    • 著者名/発表者名
      N. Komura, K. G. N. Suzuki, H. Ando, M. Konishi, M. Koikeda, A. Imamura, R. Chadda, T. K. Fujiwara, H. Tsuboi, R. Sheng, W. Cho, K. Furukawa, K. Furukawa, Y. Yamauchi, H. Ishida, A. Kusumi (Co-Corresponding Author), and M. Kiso
    • 雑誌名

      Nat. Chem. Biol.

      巻: 12(6) ページ: 402-410

    • DOI

      10.1038/NCHEMBIO.2059

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [学会発表] Very transient molecular interactions enable signal transduction: findings by single-molecule tracking2016

    • 著者名/発表者名
      Akihiro Kusumi
    • 学会等名
      Xth International Workshop on EPR in Biology and Medicine
    • 発表場所
      クラクフ(ポーランド)
    • 年月日
      2016-10-06 – 2016-10-06
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Ultrafast single-molecule imaging for understanding signaling at the cell membrane2016

    • 著者名/発表者名
      Akihiro Kusumi
    • 学会等名
      1st Microscopy Mela: 8th International Bangalore Microscopy Course
    • 発表場所
      バンガロール(インド)
    • 年月日
      2016-09-25 – 2016-09-25
    • 国際学会 / 招待講演

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公開日: 2018-01-16  

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