研究課題/領域番号 |
16F16419
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
吉川 武男 国立研究開発法人理化学研究所, 脳科学総合研究センター, チームリーダー (30249958)
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研究分担者 |
SHABEESH BALAN 国立研究開発法人理化学研究所, 脳科学総合研究センター, 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2016-10-07 – 2019-03-31
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キーワード | 統合失調症 / プレパルス抑制 / マウス近交系 / Chd23遺伝子 / 関連解析 |
研究実績の概要 |
1.統合失調症サンプル1,200例を用いた、ヒトホモローグCDH23遺伝子の全エクソン(合計70エクソン)のリシークエンス解析 膨大な数のエクソンを持った遺伝子を膨大な数のサンプルでスクリーニングする場合、次世代シークエンサーを用いたMIP (Molecular Inversion Probe)法がコストパフォーマンスに優れているので、本手法を取り入れて解析を行った。その結果、23個のミスセンス変異を検出した。ただ、これらは頻度が稀であったため、in silicoの機能予測ではdamagingなものが含まれるものの関連解析では統合失調症への有意な関連は見いだせなかった。関連解析のコントロールとしては、約2,000人分の日本人ゲノムデータベースであるToMMoを参照した。
2.753A/G多型 2種類のマウス近交系、C57BL/6N (B6)とC3H/HeN (C3)の間には、Chd23遺伝子において、exon 9に753A/G多型が存在する(B6がAA、C3がGG;アミノ酸配列には影響しない)。興味深いことに、ヒトでも753A/G多型に相当するものが存在し、Aがマイナーアレルになっており、Genome Aggregation Database (gnomAD: http://gnomad.broadinstitute.org)のデータをコントロールとした場合、Aアレルは統合失調症に有意に関連していた(P value = 0.00000095, odds ratio = 84.25, 95% C.I. = 22.61 to 313.9)。このことは、Aアレルがマウスではプレパルス抑制を向上させる結果と反対になる。現在、この問題の解決に取り組んでいる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マウスを用いたプレパルス抑制(統合失調症関連形質)の責任遺伝子、責任多型を探索する研究から、Cdh23遺伝子の753A/G多型に到達し、それがヒト統合失調症にも関連していることが確かめられた。
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今後の研究の推進方策 |
マウスにおけるCdh23遺伝子の、プレパルス抑制(PPI)に及ぼす753A/G多型の効果は、ヒト統合失調症におけるアレル効果と逆であるので、そのメカニズムの解明に取り組んだ後論文化を目指す。なお現時点で、753A/G多型はCdh23遺伝子の発現量に影響を与える(eQTL)こと、ヒトとマウスではアレルの効果が逆である可能性を得ている。
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