本研究では、機能材料中の異種界面および双晶界面の原子構造と電子状態について、最先端の原子分解能走査透過型電子顕微鏡法(STEM)と密度汎関数法による第一原理計算により研究を行った。 金属と酸化物により形成される異種界面では、界面の原子構造が機能特性に多大な影響を及ぼす。また、界面の原子構造と電子状態は、酸化物結晶の界面における極性に依存して大きく異なると考えられる。本研究では、分子線エピタキシー法によりZnO(0001)および(000-1)面にPd原子を成膜し、原子分解能STEMにより異種界面の観察を行った。STEM像の解析で得られた界面原子構造モデルをもとに約1000原子からなる超格子を作成し、第一原理計算により構造最適化を行い、界面の電子状態を計算した。Pd/ZnO界面の格子定数は18%と大きく異なるが、周期的に原子位置がずれることで不整合を緩和していることが分かった。さらに、界面の化学結合は共有結合とイオン結合の両方の性質を示し、その度合いと電子状態を定量的に明らかにした。 また、磁性材料双晶界面の電子状態についても解析を行った。磁性材料の一つとして応用が期待される四酸化三鉄は、常温でフェリ磁性・半金属性を示し、スピントロニクス、触媒、医療材料など幅広い実用範囲を持つ。本研究では、まず三酸化二鉄結晶を真空中で1246℃で加熱し、四酸化三鉄双晶試料を得た。その後、STEM観察を行い3種類の安定構造を発見した。第一原理計算により原子構造と電子状態を詳しく調べた結果、双晶近傍の強・反磁性は原子構造に依存することが分かり、それぞれ特徴的な電子状態を持つことが明らかになった。また、微分位相コントラストSTEM法により磁気結合を直接観察し、理論計算による予測と整合する結果を得た。
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