平成28年度に選定したモデル光触媒(部分プロトン交換チタン酸カリウムナノワイヤー[酸化チタン粉末の濃水酸化水溶液中での水熱反応による調製]を原料とする水熱反応によって得られる八面体形状アナタース型酸化チタンおよび塩化チタンを原料とする気相合成反応による十面体形状アナタース酸化チタン)について酸素還元の多電子移動プロセスについて,光触媒反応の速度の光強度依存性の解析を既存の高強度UV-LEDランプ(最大約330 mW/cm jを用いて行った.これまでに,酸素の還元が1電子移動の場合には,ペルオキシラジカルを連鎖担体とする連鎖反応機構にもとづいて反応速度が光強度の1/2(0.5)次となることが知られている.酸素の還元が多電子移動の場合には,1つの粒子が複数の光子を吸収する必要があるため,速度の光強度依存性が1/2次からはずれることが予測されていた.実際には,無担持の酸化チタンの場合,低強度では光触媒反応速度は光強度の一次に比例した.これは,1つの粒子あたりに2個の正孔が蓄積する確率が光強度の二次に比例して増大するため,連鎖反応機構による0.5次との乗算により一次になったと思われる.さらに強度を上げると,光触媒反応速度は光強度の0.5次に比例した.これは,ある程度の光強度となると,1つの粒子あたりにつねに2個(以上)の正孔が存在するようになるためと考えられる.一方,酸化銅クラスターを担持させると,低強度でも一次となり,中強度領域では強度を上げても速度が一定となる飽和現象が認められた.これは酸化銅クラスター表面への酸素の拡散が支配的となるためである.さらに高強度では,速度が光強度の二次に比例した.これは,酸化チタン表面で酸素の4電子還元が起こるためと考えた.
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