仔マウスに1日3時間の母子分離を生後8日目まで毎日繰り返し経験させると、MDでcFosを発現する細胞数が有意差を持って増加していることを明らかにした。MDはさらに3つの領域に分けることができ、母子分離によってcFosの発現が吸える細胞はanterior MDに限局していることを明らかにした。 DiIによってanterior MDの軸索投射先をトレースしたところ、主にmPFCに投射していることを明らかにした。次にPFCの神経細胞の形態が発達とともにどのように変化し、母子分離ストレスによって影響を受けるのかを調べた。これにはあらかじめmPFCに胎生15.5日目に蛍光タンパクをコードするプラスミドを子宮内遺伝子導入法によって導入しておく。これによってmPFCの大脳皮質2層の細胞がラベルされ、生後の発達期での形態観察を可能にする。この結果、mPFCの大脳皮質2層の細胞は生後すぐから樹状突起の伸張を開始し、生後20日目まで複雑さを増し、その後生後30日目までに過剰な樹状突起の刈り込みを行うことを明らかにした。そこで、このmPFCの神経細胞が母子分離ストレスによってどのような影響を受けるのかを明らかにするために、母子分離によってMDでcFosの発現が上昇することを確認した生後8日目に観察した。この結果、母子分離ストレスを経験した群は有意差を持って樹状突起の本数が少ないことが明らかになった。ここまでの結果から、生後発達期の母子分離によるストレスはMDの神経活動を上昇させ、その結果ポストシナプス側のmPFCの樹上突起の伸張に影響を与えるということが示唆された。今後はさらにこのことを証明するために、mPFCの樹上突起の伸張及び刈り込みにおけるMDからの入力の影響、mPFCの樹上突起が形成不全を起こした場合にマウスが行動異常となるかを明らかにしていく計画である。
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