研究実績の概要 |
N=4超対称Yang-Mills理論において,グルーオンのN点オンシェル散乱振幅はN個の光円錐辺をもつ多角形Wilsonループの期待値と等価である。任意の多角形Wilsonループは基本的な5角形Wilsonループの演算子積展開として表され, 5角形Wilsonループは中間状態に現れるフラックスチューブの励起状態の動力学で決定される。励起状態はスカラー、フェルミオン、さらにその束縛状態である中間子があり, これまでの研究によりフェルミオンの寄与が古典的な部分の寄与と同程度であるという予想外の結果が判明している。 今年度は以上の成果を踏まえ、特に6角形Wilsonループの演算子積展開について研究を行い、以下の新しい結果を得た。(1) スカラーの寄与を系統的に行い, SU(4)行列因子についてのYoung図形の寄与を足しあげることでその評価式を得ることができた。(2) 強結合における6角形Wilsonループについて, スカラーの寄与は5角形にツィスト場を挿入した形状因子の2乗の形になっており、この形はオメガ背景場におけるN=2超対称ゲージ理論のNekrasov分配関数のNekrasov-Shatashvili極限と極めて類似した構造を持っている。この類似性と(1)のYoung図形による手法を組み合わせることにより、フェルミオンと反フェルミオンの束縛状態の中間子状態の寄与を決定することができ, ゲージ重力対応から期待される極小曲面の面積の一致することが示された。(3)6点振幅と円錐的な特異性を有するツイスト演算子の構造因子を対応関係を調べ、どのような演算子が該当するかを構造因子が満たす公理系の立場から考察した。 以上の成果により多角形Wilsonループの可積分構造についてより詳しい知見が得られた。
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