研究課題/領域番号 |
16F16743
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研究機関 | 東京女子大学 |
研究代表者 |
原 英一 東京女子大学, 現代教養学部, 教授 (40106745)
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研究分担者 |
HOUWEN ANDREW 東京女子大学, 現代教養学部, 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2016-10-07 – 2019-03-31
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キーワード | イマジズム / 正岡子規 / モダニズム / 日英交流 / エズラ・パウンド |
研究実績の概要 |
本研究は研究分担者が受け入れ研究者の所属する東京女子大学に研究員として着任した平成28年9月から開始されたものである。そのため、平成29年3月末までの研究期間では、主として研究環境の整備に重点を置くことになった。研究関係の書籍及びノートパソコン(ソフトウエアを含む)の購入にかなりの経費を支出した。その他、資料収集と研究打ち合わせ及び研究発表のために国内出張を2回実施した。イマジズム関係及び明治、大正、昭和、さらには平成に至るまでの日本詩壇の資料について、広範囲に収集と分析を行った。東京女子大学の図書館には近代日本文学の豊富な資料があることが判明したので、それらの閲覧と検討が研究活動の中心となった。その他、東京都内及び近郊の図書館、資料館などに頻繁に赴き、資料の閲読、ノート採録、分析検討を行った。訪問先は国立国会図書館、横浜開港資料館、近代日本文学館等である。 資料収集と研究打ち合わせのため、国内出張を2回実施した。一回目は、愛知教育大学でのイマジズム関係資料収集及びイマジズムに関する研究打ち合わせであった。この出張の際には名古屋大学国際言語文化研究科の永畑明利教授との研究打ち合わせを行った。出張期間中に、愛知県立時習館高等学校にて日本学術振興会主催「サイエンス・ダイアログ」の講演を行った。高校生対象とはいえ本研究課題に関連する内容であり、非常に有意義であった。二回目は、名古屋大学でのイマジズム関係資料収集及び国際シンポジウム"'Walls' in Anglo-American Literature"での研究発表であった。 半年間の研究期間であったが、日本国内でしか入手できない多数の資料を閲覧することができたばかりではなく、多くの研究者と交流することができた。国際シンポジウムでの発表は本研究の成果発表の最初のものとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
半年間という短い研究期間であるが、本格的研究に着手することができた。研究員(研究分担者)は日本における生活経験があり、日本語の読解能力は、明治期の日本語文献を容易に読みこなすなど、卓越したものがある。研究ノートは手書きであるが、約半分が日本語であり、日本語書記(作文)能力も非常に優れている。日本語会話のみが、イギリス在住であったため実際の使用機会が限られていたという理由で、やや不自由であるが、聴解力はほぼ100パーセント近い。研究を進めるための基本的な能力が十二分に備わっていたことが、研究がおおむね順調に進んだ理由である。 研究環境は早期に整備されたが、日常生活の面では環境の違いに順応するための時間を要した。そのため、当初計画以上に研究を奨めることができなかった。しかし、現在は、日本での生活環境に完全に適応できているので、次年度の研究は大きな進展が見込まれる。とくに、この半年間で日本国内の研究者たちと個人的なネットワークを構築することができたのは大きな成果であり、今後の研究に大いに役立つと期待される。
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今後の研究の推進方策 |
初年度の奨励費によりノートパソコン等を購入し、さらに、受け入れ研究機関の好意により、共用研究室の提供を受けた結果、研究環境がほぼ整備されたので、平成29年度は、研究課題の主要な部分を完成させるべく、一層精力的に研究を推進する。具体的には、正岡子規等、明治期から現代にかけての、イマジズムと関係の深い日本の詩人・評論家の資料を購入あるいは複写しての、研究資料基盤の構築を継続して行う他、国内国外の各地に出張して、資料の収集と研究成果の発表を行う。こうして研究の深化と体系化を目指しつつ、単著の執筆を開始する。 本奨励費による旅費を使用して、日本国内および国外のイマジズム関係の資料収集とその分析を継続する。東京都内及び近郊の施設、すなわち国立国会図書館、横浜開港資料館、近代日本文学館等を頻繁に訪問し、資料の閲覧と収集を行う。その他、日本国内のイマジズム関係の資料を所蔵する図書館、資料館等に出張して資料収集を行う。前年度中の研究活動により、日本国内で研究分担者を中心とする研究者ネットワークが形成されつつある。これをさらに拡大して、イマジズムに限らず、日本近代文学一般の研究者とも幅広く交流して、研究の深化と拡大をはかる。 これまでの研究成果は、今年度にアメリカ合衆国フィラデルフィアで開催されるエズラ・パウンド国際学会において発表することを計画している。もう一つの計画として、今年度は、研究分担者が主催者となってイマジズムに関するワークショップあるいは講演会を実施したいと考えている。そのために日本エズラ・パウンド協会と緊密な協力関係を構築して、実施に向けての準備を進める。 昨年度と同様に、Yale大学のBeinecke Libraryの資料などが本研究にとって非常に有用であるので、それを含めた海外のアーカイヴ、図書館からの資料取り寄せも、本科研費によって実施する。
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