研究課題/領域番号 |
16F16760
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研究機関 | 中部大学 |
研究代表者 |
河村 公隆 中部大学, 中部高等学術研究所, 教授 (70201449)
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研究分担者 |
VODICKA PETR 中部大学, 中部高等学術研究所, 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2016-10-07 – 2019-03-31
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キーワード | エアロゾル / 中央ヨーロッパ / 中部日本 / 有機物 / 低分子ジカルボン酸 / 有機炭素 / 黒色炭素 / 炭素安定同位体 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、(1)中央ヨーロッパ(チェコ・プラハおよびその近郊のバックグラウンドサイト)と中部日本(春日井市)で一年間にわたり採取した大気エアロゾル試料に存在する有機物を分子・元素レベルで検索する。(2)異なるサイトに共通する有機物トレーサーを検索する。また、地域に特徴的なトレーサーを見いだす。(3)中央ヨーロッパにおける都市域と非都市域における有機物組成の違いを明らかにすると共にその特徴をこれまで報告されているアジア域や西部北太平洋の大気エアロゾル試料中の化学組成と比較し、共通性・違いを探し出す。(4)有機エアロゾルの組成の比較から、有機物の起源・生成メカニズム、光化学的エイジング情報を入手する。また、安定炭素同位体比の測定からそれらの議論をサポートする。 H29年度は、中部大学の中部高等学術研究所があるリサーチセンターの屋上で2017年4月~現在までに採取したエアロゾル試料を分析し、有機炭素,元素状炭素濃度をSunset Lab製の炭素系で測定した。また、水溶性炭素を島津TOC計で測定した。これらの試料には、春のアジアからの黄砂の輸送の時期に採取された試料も含まれている。また、同試料中の低分子ジカルボン酸をブチルエステル誘導体化・ガスクロマトグラフ・質量分析計を用いて測定し、その分子分布・濃度を測定した。その結果、シュウ酸を主成分とする炭素数10までの低分子ジカルボン酸を検出した。28年度に測定した、チェコのデータと比較し、その特徴を解析した。シュウ酸が主成分であるという点では同じであったが、分子分布の詳細な解析(マロン酸、コハク酸の濃度比等)から、中央ヨーロッパに試料に比べて、中部日本の試料の方が、光化学的エイジングをより強く受けていることがわかった。このことは、エアロゾルの起源がアジア大陸にあり、日本への輸送中に光化学反応を受けた結果であると解釈された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
分析法の習得を行い、エアロゾル試料から低分子ジカルボン酸の抽出・分離・ガスクロマトグラフによる測定ができるようになり、また、測定の再現性、回収率・ブランクの検討を行った結果、高い分析能力を身につけている。また、エアロゾル試料の測定を順調に行い、その結果を順調に出している。更に、その結果をまとめて、国際学会で発表を行った。現在、分析結果の一部を論文にして、河村がレビューしてコメントを与えた。 エアロゾル炭素・窒素の測定と、その安定炭素・窒素同位体比の測定を行い、信頼性のある結果を生み出している。研究成果をEuropean Aerosol Conference (スイス・チューリッヒ)で発表した。また、名古屋大学との共同研究において、有機炭素・元素状炭素の測定を担当し、その成果は共著論文として国際誌での発表につながった。これらの研究の進捗状況から、本研究は概ね順調に進展していると判断された。
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今後の研究の推進方策 |
現在、昨年度に行った安定炭素同位体比測定の結果を論文にしており、近日中に国際誌(Atmospheric Chemistry and Physics)に投稿予定である。また、欧州と日本との大気エアロゾル試料の化学組成の比較についても今年度中に論文にして、国際誌に投稿予定である。また、微粒子中の有機炭素・黒色炭素をSunset Lab社製のOC/EC計で測定を終了させる。この結果についても論文を執筆し、国際誌に投稿する。
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