化学ループ法と再生可能エネルギーを融合させた新規なシステムの提案として、二酸化炭素の有効利用を指向し、メタン酸化あるいは熱分解とカップリングさせた二酸化炭素の還元反応による一酸化炭素生成システムの検討を行った。このシステムは2つの反応器から構成され、その反応器内部を酸素キャリア粒子である酸化鉄/鉄粒子が循環する(化学ループ法)。その際、メタンの熱分解による炭素粒子の析出が酸素キャリア粒子上で生じる。この反応は吸熱反応であり、以下の反応式で表される。 CH4 + 3CO2 → 4CO+2H2O △H (800℃) = 346 kJ (1) この吸熱反応の熱は太陽熱によって供給されることを想定した。高温の熱が利用できない場合は、メタンの熱分解反応から生成した水素の一部を燃焼させ、得られた高品位熱を用いることを想定した(式2)。 CH4 + 1.8CO2 + 0.6O2 → 2.8CO+2H2O △H (800℃) = -11 kJ (2) 平衡計算により、反応器内で燃料気体と酸素キャリア粒子の向流で反応を行った場合に、一酸化炭素の収量が最も高くなることが明らかになった。この反応システムは、2つの流動層と1つのライザーから構成されることを想定した。このシステムにおいて、850℃で水蒸気をライザーに導入することで、1 molのメタン消費に対し2.7 molの CO を純度 84% で得られることがわかった。さらに、メタンの熱分解を加速する酸素キャリア粒子の開発も行った。プロトン伝導体であるBaZr0.9Y0.1O3 (BZY)を用いたFe/BZY複合粒子を用いることで、メタン熱分解の反応速度が向上することが明らかになった。開発した粒子を提案システムに導入することで、高効率な化学ループシステムの構築が可能になる。
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