研究課題/領域番号 |
16F16766
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研究機関 | 国立研究開発法人国立環境研究所 |
研究代表者 |
王 勤学 国立研究開発法人国立環境研究所, 地域環境研究センター, 主席研究員 (50353545)
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研究分担者 |
AI ZHIPIN 国立研究開発法人国立環境研究所, 地域環境研究センター, 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2016-11-07 – 2019-03-31
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キーワード | 蒸発散量 / リモートセンシング手法 / 山岳地帯 |
研究実績の概要 |
広域な蒸発散量(ET)は、通常、リモートセンシングデータを用いて推定され、データの希少地域にとって非常に有用である。近年、Sim-ReSET(Sunら、2009)やTTME(Longら、2012)など一連のリモートセンシングに基づくETモデルが開発されている。しかし、これらのモデルは、通常、平らな地表面で開発・検証されたため、複雑な地形条件で適用する際に誤差が大きい。本研究は、Priestley-Taylorモデルをベースにした複雑な地形条件を考慮した新しいリモートセンシングETモデルを開発した。このモデルは2ソースモデルであり、Wangら(1999)とLongら(2010年)が改良した日射、正味放射および日単位のETなどの推定法を導入した。さらに、LongとSingh (2012)が改良した水不足指数(WDI)の推定法も含まれた。研究対象地域は中国北部にある地域を選んだ。そこでは、2014年のLandsat画像9シーンを入手した。また、ASTER Global Digital Elevation Mapデータを用いて標高、勾配、勾配などの地形データも解析した。さらに、モデルの精度を検証するため、山地と平地の2サイトでの観測データを用いた。その結果、適合した散乱点は1:1の線の近くにあり、山地と平野での相関係数はそれぞれ 0.87と0.97であった。また、相対誤差はそれぞれ0.69と0.4mm day-1であった。これらの結果から、本モデルが山地と平野の両方で許容可能な精度でETの季節変動を捕捉することができた。しかし、モデルに用いた気温と地表面温度は、局所的な経験式を用いて推定されたため、モデルの適用範囲を制限する可能性があると考えられる。今後、このような問題に取り組み、特に山地でより多くのデータを収集し、更なる精度検証を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画の通りに実施した。まず、文献調査とデータ収集を行った。そのうち、地上観測データについて、環境省が実施してきた「温暖化影響早期観測ネットワーク」(2006-2012)の観測サイトのうち、華北平野の農地生態系を代表するYuchengサイトや亜熱帯丘陵地帯の水田生態系を代表するTaoyuanサイトの観測データを収集した。また、中国科学院が所有する山地生態系を代表するTaihangshanサイトの観測データも収集した。その次、Priestley-Taylorモデルをベースにした複雑な地形条件を考慮した新しいリモートセンシングETモデルを開発し、収集された観測データを用いて初期的な精度検証を行った。これらの研究成果を平成29年3月に筑波大学で開催した日本地理学会で発表した。
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今後の研究の推進方策 |
まず、前年度で開発したモデルの適用範囲を制限する要因の一つ、気温と地表面温度の関係について検討し、LANDSAT8などのリモートセンシングデータを用いた気温の推定方法を開発する。また、中国科学院農業資源研究センターと共同で、山地生態系における渦相関法による観測された蒸発散データおよび南北斜面の気象データを収集し、モデルを精緻化し、精度検証を強化する。さらに、既存の他のETモデルと比較することで、モデルの特徴および空間的な再現性について評価を行う。研究成果を論文としてまとめて、国際誌に投稿する予定である。
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