本研究は、複雑な地形に適した新たなETモデルの開発、およびその精緻化と精度検証を行い、最終的に、土地利用変化の影響評価を目的とした。これまでは、Bouchetが提案した線形型補完法をベースに、Brutsaertが物理過程を考慮されて改良した非線形型補完法とPriestley-Taylor式とPenman式を組み合わせることによって、ETモデルの精緻化を行った。また、日本国内の山地森林観測サイトの4地点で渦相関法による観測されたデータを用いてモデルの精度検証も行った。 今年度では、これまで開発されたETモデルを用いて土地利用変化の影響評価を行うため、中国科学院農業資源研究センターと共同で、中国北部の太行山山地生態系実験場で観測した日射量、気温、表面温度、湿度、降水量などの気象・水文データを入手し、モデルに導入した。また、Google Earthの画像データと現場調査を組み合わせることで、研究対象となる太行山山地生態系実験場が所在する小流域において土地利用類型を分類し、これに基づいて土地利用類型毎の蒸発散量の経年変化を推定した。その結果、季節的な違いがあるが、年間の総量から見ると、農地からの蒸発散が最も多く、その次、林地、果樹園、灌木、そして草地の順で段々小さくなっていることが分かった。 関連の成果は「Investigating the new nonlinear complementary method in estimating land-surface evaporation under different terrain conditions」として、「第15回アジア・オセアニア地球科学会」で発表した。
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