研究課題/領域番号 |
16F16788
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研究機関 | 独立行政法人国立科学博物館 |
研究代表者 |
谷 健一郎 独立行政法人国立科学博物館, 地学研究部, 研究員 (70359206)
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研究分担者 |
CONWAY CHRISTOPHER 独立行政法人国立科学博物館, 地学研究部, 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2016-11-07 – 2019-03-31
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キーワード | 海底火山噴火 / トンガケルマディック弧 / 伊豆小笠原弧 / 流紋岩質マグマ |
研究実績の概要 |
平成28年度はニュージランド北東沖のHavre海底火山において無人探査機を用いて採取した2012年噴火の噴出物について代表的な計30試料を選定し、蛍光X線分析装置を用いた全岩化学組成分析を行った。その結果、これまで一連のマグマ活動によって形成されたと考えられてきた溶岩ドームと溶岩流がそれぞれ異なる化学組成をもった二種類の流紋岩質マグマの活動によるものであることが判明した。これはHavre火山2012年噴火のプロセス解明に重要な発見である。 また噴出物に含まれる斑晶鉱物の主要元素組成について電子マイクロプローブアナライザーを用いて分析し、鉱物温度圧力計を適用することで噴火前のマグマ温度圧力条件を検討した。 これらの予察的成果について平成29年1月にオーストラリア・ホバートで開催された海底噴火の国際会議「AGU Chapman Conference on Submarine Volcanism」において研究分担者(Conway)が「Scales of compositional heterogeneity in volcanic products of the 2012 eruption of Havre volcano, Kermadec arc」というタイトルでポスター発表を行い、国際共同研究チームで今後の研究方針を議論した。 またHavre火山噴出物との比較研究を行うために伊豆小笠原弧の流紋岩質火山(新島・神津島)のサンプリング調査を平成28年11月に実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Havre火山噴出物についての予察的な全岩化学組成分析は予定通り完了し、噴火を駆動したマグマシステムについて新知見が得られた。また斑晶鉱物の鉱物化学組成分析も順調に進んでおり、噴火前のマグマ温度圧力条件が制約されつつある。 これらのデータはHavre火山2012年噴火に関する国際共同研究チームにおいて、各研究グループの今後の分析解析方針を決定する上で重要な基礎データとして活用されている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度はHavre噴出物のより系統的な全岩組成分析(計100試料)を行って、各噴火ステージの詳細なマグマ発達史を明らかにする。またレーザーアブレーションICP質量分析計を用いて斑晶鉱物の微量元素組成プロファイルを求め、元素拡散モデル計算からマグマ溜り内プロセスの時間スケールを制約する。これらの地球化学的・岩石学的制約と海底観察から得られた火山地質学的情報を統合することでマグマ溜り発達過程について、その時空間変遷を含めて明らかにする。これらの成果については本年度後半から国際誌への論文公表の準備を開始する予定である。 研究経費としては国内・国際学会参加と野外地質調査の旅費に加え、化学分析の実験消耗品を積算した。
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