研究課題
本研究では2012年7月に水深700 mの深海底で噴火したニュージーランド北東沖のHavre海底火山において無人探査機を用いて採取した火山岩類の岩石学・地球化学的分析から、Havre火山のマグマシステムの全容を解明し、大量の巨大軽石の噴出を伴う海底噴火を起こした2012年噴火のマグマ初期条件とマグマ溜まり内プロセスの時間スケールを制約することを目指している。本年度は噴出物の系統的な全岩化学組成分析を主に行い、その結果、Havre火山は過去に玄武岩から流紋岩に至る幅広い組成バリエーションを持ったマグマを噴出し、2012年噴火ではその中でも最も分化した組成の流紋岩質マグマを噴出したことが判明した。また噴出物に含まれる火山ガラスについても電子マイクロプローブアナライザーを用いた主要元素組成分析を行い、2012年噴火は液相濃集元素含有量が明瞭に異なる二種類の流紋岩質マグマが混合しながら噴火に至ったことが明らかとなった。これは昨年度実施した予察的な全岩化学組成分析から得られていた結果と調和的である。斑晶鉱物についても主要元素組成分析を行い、鉱物温度圧力計を適用することで噴火前のマグマ温度圧力条件を制約できた。さらには研究分担者Conwayは高温のマグマと水(氷)が接した際の相互作用を噴出物の微細構造から制約することを目的として9月に北海道利尻火山の地質調査を実施し、北海道大学において研究発表を行った。昨年度予察的に行った2012年噴火噴出物の全岩化学組成分析について国際誌2編として公表した。
2: おおむね順調に進展している
予定していたHavre火山噴出物の系統的な全岩化学組成分析は順調に進み、ほぼ完了した。また班晶鉱物の主要元素組成分析も計画通りに進んでおり、噴火前のマグマの温度圧力条件を制約することに成功した。計画していた局所微量元素分析については年度内に完了できなかったが、次年度早期に実施する目途は立っている。さらには昨年度実施した全岩化学組成分析の予察的な結果についても国際誌(Science Advances・Earth and Planetary Science Letters)に論文として公表した。
平成30年度は研究最終年度にあたり、これまでの研究成果の総括を最優先する。そのために未だ実施できていないレーザーアブレーションICP質量分析計を用いた斑晶鉱物の局所微量元素組成分析を早期に行い、元素拡散モデル計算からマグマ溜り内プロセスの時間スケールを制約する。その後、噴出物の岩石学・地球化学的分析から得られたマグマ噴火条件・成因モデルと無人探査機による観察で制約されている火山地質学的情報との比較研究を行い、Havre火山2012年噴火のマグマ成因とマグマ溜り発達過程について制約を与える。これらの成果については年度終了までの国際誌への論文投稿を目指す。
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 3件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 4件、 招待講演 1件)
Earth and Planetary Science Letters
巻: 489 ページ: 49-58
10.1016/j.epsl.2018.02.025
Science Advances,
巻: 4 ページ: 1-6
10.1126/sciadv.1701121
American Mineralogist
巻: 103 ページ: 565-581
10.2138/am-2018-6199