研究課題/領域番号 |
16F16795
|
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
朝倉 清高 北海道大学, 触媒科学研究所, 教授 (60175164)
|
研究分担者 |
FEITEN FELIX 北海道大学, 触媒科学研究所, 外国人特別研究員
|
研究期間 (年度) |
2016-11-07 – 2019-03-31
|
キーワード | 燃料電池 / PtCo / 背面入射XAFS / 偏光XAFS |
研究実績の概要 |
燃料電池の実用化のためには燃料電池触媒である白金量の低減と酸素還元活性の向上が必要である。近年PtとCo, Cu, Niなどの金属とからなるPt合金ナノ粒子触媒が用いられ、白金あたりの高活性化を達成しようという試みがなされている。しかし、その合金ナノ粒子の構造や電子状態についてはほとんどわかっていない。これは、電極として用いられるカーボンがアモルファス構造をしているためである。そこで、本研究では平坦な基板であるHOPG(Highly Oriented Pyrolytic Graphite)を用いて、 PtCoナノ粒子をこの基板上に調製し、受入研究者が開発した表面X線分光法である超高感度偏光XAFS法や最新のSPMやXPSなどの表面科学的手法を駆使して、それらの合金ナノ粒子の構造や電子状態、基板との相互作用を解明して、その酸素還元活性要因を明らかにする。PtCoは高活性・高耐久性を持つ燃料電池触媒とされてきた。本研究では、高感度背面入射偏光XAFS法によりPtCoのグラファイト担体上における構造とそのポテンシャル依存性をしらべた。とくにPtCoはプラズマアーク法で調製した。この方法はナノオーダのPtおよびPt合金微粒子を得る手法である。その結果、PtとCoは、合金を作っていること、Coが電気化学反応中容易に析出することやNを同時に打ち込むことで、Coの析出が抑えられることを見出した。また、Pt-Ptの結合距離はCoとの合金化により0.270 nmと極端に短縮することが分かった。これが高活性化要因になっていることがこれまでの文献から予想される。さらに、Auとの合金効果についても検討を加える。現在、論文執筆に向けてさらに検討を進める。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
XAFSの解析法をマスターし、さらに解析法の開発を行う。また、アークプラズマ法でPtCoナノ粒子を調製し、これをHOPG基板に蒸着して、その構造とポテンシャル依存性を偏光XAFS法により測定した。さらに解析して、その構造や電位ポテンシャルによる構造変化等を明らかにした。この成果を国際会議で発表し、論文投稿を考えている。半年間ではあるが、ほぼ研究がまとまってきたことからこう判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
引き続き、様々な構造やモルフォロジーを持つPtCoナノ粒子を調製する。この時に、電気化学的方法、ゾルゲル法、その他の手法を検討する。また、現在、限られた放射光施設でしか測定することができない超高感度XAFS法をより汎用的な放射光施設でも測定できるように分光結晶と測定装置の改造を行う。こうすることで、マシンタイムを容易に確保し研究を加速するとともに、本手法の世界的に利用できるようにする。またAFM, XPS, 超高感度XAFSなどの表面科学的研究を通して、Pt合金の構造や電子状態を決定し、酸素還元活性と比較することで、酸素還元活性発現メカニズムを解明する。こうした情報は、Pt合金ナノ粒子に関する基礎的知見であり、今後の燃料電池用Pt合金触媒開発に重要な知見を与える。
|