研究課題
実験に用いた薄膜試料は、ドイツ・ダルムシュタット工科大学において、新しいレーザー励起相変化材料Ge-Cu-Te混合系半導体の非結晶状態の、いくつかの組成比のものをスパッター法により作製した。使用したスパッター源は別予算で購入した。試料は、大型放射光施設であるSPring-8(兵庫県)やESRF(フランス)に持ち込み、いくつかの組成については既にX線異常散乱実験を室温で行い、Ge、CuおよびTe原子について差構造因子を導出した。ビームタイム申請はあらかじめ行っておいた。また、実験にはドイツ・マールブルク大学から大学院学生およびチェコ・パルドゥビチェ大学よりポスドクの協力を得た。3つの元素について実験が終了した組成について、データ駆動科学の一つである逆モンテカルロ計算を行い、既に論理性のある部分構造因子や部分動径分布関数、さらに部分配位数や個別原子間距離などの構造パラメータが導出された。また、得られた3次元構造からリング分布などの電子状態に深く関連すると思われる構造情報を、現在取得しようとしている。得られた結果については、特別研究員による口頭発表を国際シンポジウムおよび国内学会において行なっている。また、以前行ったGe-Sb-Te混合系の結果も含めて2編の論文を執筆中である。さらに、X線異常散乱実験を定常的に行うため、ややX線強度の低いSPring-8のビームライン、つくば市のPFあるいは鳥栖市の九州シンクロトロン光センターを利用することを計画し、現在実験条件の改良を行っている。
1: 当初の計画以上に進展している
既に必要試料の作成は終わった。SPring-8とESRFの2つの施設を用い、それぞれに優位性のある元素についての測定に成功した。さらに以前行ったGe-Sb-Te混合系の結果も含めて2編の論文を執筆中で、うち1編は受理の最終段階にある。大型放射光施設だけでなく、X線強度の劣る施設でのX線異常散乱実験を計画し、その装置開発に取り組んでいる。
既に確保したESRFやこれから申請するSPring-8でのビームタイムを使って、Ge-Cu-Te混合系の4つの組成についてX線異常散乱実験を行う。そこから得られる差構造因子を用いて逆モンテカルロ計算により構造パラメータを導出し、電子状態との関連を明らかにする。結果は、ヨーロッパで開催される国際会議で、特別研究員によって口頭発表されることが決まっているので、解析を十分に行う。さらに研究結果は、2-3編の論文としてまとめる。X線異常散乱実験を定常的に行うため、ややX線強度の低いSPring-8のビームライン、つくば市のPFあるいは鳥栖市の九州シンクロトロン光センターを利用するため、実験条件の改良を行っている。また、現在の装置を流用して、時間分割X線異常散乱実験も原理的に可能であるので、その具体的な手法を検討したい。
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すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (15件) (うち国際学会 6件、 招待講演 1件) 備考 (1件)
日本セラミックス協会誌「セラミックス」
巻: 52 ページ: 341-344
http://crocus.sci.kumamoto-u.ac.jp/physics/SR/index.html