研究課題/領域番号 |
16F16798
|
研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
久堀 徹 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 教授 (40181094)
|
研究分担者 |
DESCHOENMAEKER FREDERIC 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 外国人特別研究員
|
研究期間 (年度) |
2016-11-07 – 2019-03-31
|
キーワード | チオレドキシン / シアノバクテリア / 遺伝子破壊 / 還元力伝達 / プロテオミクス |
研究実績の概要 |
光合成生物は、光合成装置の機能と代謝機能の共役を、還元力を伝達することで制御している。この制御の中心的な役割を果たしているのは、チオレドキシンという分子内にジスルフィド結合を形成可能な二つのCys残基を持ったタンパク質である。チオレドキシンは、光合成電子伝達系から供給される還元力の一部を利用して自身のチオール基の酸化還元状態をコントロールし、これを標的タンパク質に受け渡すことで、標的タンパク質の機能を制御する。糸状性窒素固定型シアノバクテリアAnabaena sp. PCC7120株の場合には、還元力の供給が、他のシアノバクテリアと同様に酸化ストレス防御システムの駆動に重要であるほか、窒素固定に特化したヘテロシスト細胞の形態形成や、窒素固定の主役であるニトロゲナーゼの機能に重要である。興味深いことにこのシアノバクテリアは複数のチオレドキシンアイソフォームを持っている。その役割分担を明らかにすることを目指して、チオレドキシンm1とCについて破壊株を作製し、その表現型の変化、細胞内の代謝系の変化を調べ、合わせてショットガンプロテオミクス法により、どのようなタンパク質の発現がチオレドキシンに影響されるのかを調べた。チオレドキシン破壊株では、チラコイド膜形成、活性酸素ストレス消去系、脂質生合成系が強く影響された。また、プロテオミクス解析によって、これらの代謝システムに関係するタンパク質群の発現が、正または負に強く制御されていることが明らかになった(論文執筆中)。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度の研究で、TrxM1とTrxCの二種類のチオレドキシン破壊株について、環境条件が生育に強く影響することや、細胞の形状の異常が見られた。そこで、電子顕微鏡観察によって細胞内の膜構造を調べたところ、野生株に比べてチオレドキシン破壊株は細胞膜の形状が波打っていることや、チラコイド膜が細胞の中央部に発達しないことが分かった。 さらに、ショットガンプロテオミクス法によって、破壊株の細胞内の全タンパク質の発現を網羅的に調べたところ、エネルギー産生系や抗酸化ストレス系に関わるいくつかのタンパク質の生合成が強く影響を受けることが分かった。プロテオーム解析については、引き続き実施し、データの精度を高める努力を行っている。
|
今後の研究の推進方策 |
プロテオミクス解析によってチオレドキシンの消長と特に強い相関をもつタンパク質群について、生化学的な解析を行い、実際に細胞内の酸化還元状態とどのように相関するのか、あるいは、その制御の生理的な意味を明らかにする。
|