線虫を用いた寿命制御遺伝子の検索により、べーターカロテンモノオキシゲナーゼ類似遺伝子を同定し、bml-1と命名した。bml-1の老化に伴う発現変化の解析とインスリン様経路のターゲット遺伝子であるdaf-16とbml-1について、その相互作用様式の解析を行った。さらに、bml-1の作用機構の解析を行い、レチノイン酸ならびにレチノイン酸受容体関連遺伝子が、線虫の寿命制御に関わることを新たに見い出した。現在、線虫のレチノレン酸受容体関連遺伝子群について、その寿命制御における役割の可能性について解析を進めている。これらの観察と関連して、脊椎動物、特に哺乳類、におけるレチノレン酸シグナル伝達について、その分子的制御機構の解析に着手し、ERK MAPキナーゼとの新しい相互作用機構を明らかにした。すなわち、レチノレン酸シグナル伝達の亢進により、ERKシグナル経路の不活性化がおこること、またERKシグナル経路の不活性化がレチノレン酸シグナル伝達の活性化を引き起こすことを示した。この双方向の相互作用の詳細な分子機構の解析は新たなシグナル伝達ネットワークの解明につながることが期待される。 アフリカツメガエルの初期胚発生におけるERK5 MAPキナーゼの機能について解析を行い、アンチセンスモルフォリノオリゴヌクレオチドによる機能阻害の実験と恒常的活性型MEK5(MEK5はERK5の直接の活性化因子)を用いた機能促進の実験とにより、MEK5/ERK5経路が神経発生において必須の役割を果たしていることを明らかにした。
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