寿命研究のモデル生物として遺伝子レベルの研究が最も進んでいる線虫を用いて、種々の食餌制限方法を試した結果、慢性的なカロリー摂取の制限(カロリー制限)が線虫の寿命を約20%延長させること、また、断続的飢餓(自由摂食と飢餓を繰り返す)が寿命を約60%延長させることを明らかにした。カロリー制限による寿命延長においては、Rheb経路の抑制がカロリー制限を模倣することを示した。なお、線虫Rhebをこの研究において初めて同定した。次に、断続的飢餓による寿命延長においては、Rheb経路が必要であることを示した。このことは、Rheb経路が寿命制御において、その延長と抑制という二重の役割を持ちうることを初めて明らかにしたものである。また、断続的飢餓による寿命延長においては、Rhebの下流に従来知られていたTORのほかに、別の因子も機能していることが明らかとなった。現在、その因子の同定を進めている。アフリカツメガエルの初期発生におけるMAPキナーゼファミリー経路の解析を進め、MLTKが軟骨形成に関与することを初めて見出した。その分子機構を解析している。最も新しく見出されたMAPキナーゼファミリー分子であるERK7のアフリカツメガエルオーソログを同定し、その機能解析を開始した。予備的実験の結果からERK7が初期胚発生に不可欠の機能を有していること、また、Wnt経路とERK7経路との間に相互作用のある可能性が示唆された。アフリカツメガエルSGK1を同定し、その発現と機能についての解析を開始し、SGK1が初期胚発生に必須の分子であることを見出した。
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