研究課題
本研究は、アブラナ科およびナス科・バラ科植物の自家不和合性の情報伝達ネットワーク解明を目的としている。本年度の主な研究成果は、以下の通り。I.アブラナ科植物の自家不和合性(1)受容体複合体の構造解明・花粉因子SP11リガンドと植物培養細胞で発現させた改変型SRK受容体問の相互作用解析を通じ、SRKがS11の受容に際し、細胞膜上で安定な高親和性二量体構造を取ることを明らかにした。(2)情報伝達ネットワークの解明・In vitroリン酸化実験を通じ、膜アンカー型細胞質キナーゼMLPKがSRK受容体型キナーゼの直接のリン酸化標的分子として機能している可能性を明らかにした。・MLPKが異なる転写様式によりN末端を異にする2種類の蛋白質に翻訳されること、各々異なる機構で細胞膜に局在すること、その細胞膜局在性が自家不和合性の情報伝達に必須であることを明らかにした。・自家受粉時には雌ずい乳頭細胞内のアクチン繊維が脱重合し、それに伴い液胞の形態が大きく変化することを見出した。これら変化が、自家受粉時の花粉の吸水・発芽阻害と関連している可能性を指摘した。(3)S複対立遺伝子間の優劣性発現の機構解明・劣性側のSP11遺伝子のメチル化に、S遺伝子座上の繰り返し配列が関与する可能性を指摘した。(4)自家不和合性反応と病原抵抗性反応との対比・Yellow cameleonを発現させた[Ca^<2+>]モニタリング実験により、不和合性花粉受粉時と不親和性菌接種時において、数分以内に類似した細胞内[Ca^<2+>]の上昇が誘導されることを明らかにした。II.ナス科・バラ科植物の自家不和合性(1)花粉因子候補SLFの機能解明・これまでにペチュニアで同定されたSLF遺伝子がSハプロタイプ間で殆ど多型性を示さないことを見出し、真の花粉因子として機能しているかどうか、再検討が必要であることを指摘した。
すべて 2007
すべて 雑誌論文 (5件)
Plant Cell 19・1
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Plant Physiology (in press)
生物の科学 遺伝別冊 21
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ブレインテクノニュース 115
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