本研究は、コミュニケーション能力の育成を図る高1クライシス対応プログラムについて、青少年教育施設における実践を収集し、それをガイダンスカウンセリングの視点から分析し、効果的なプログラムを明らかにすることを目的とした。 研究方法は、北海道の青少年教育施設を対象に、5年間にわたり高校1年生の宿泊研修において実施されたコミュニケーションプログラムの内容について生徒と教員を対象に事後アンケートを実施した。実施した30校全ての学校において、実施したプログラムに対しての満足度が高いことがわかった。さらに詳細を分析するために自由記述に着目し、取組みに違いがある学校を抽出してプログラムの比較検討を行った。 その結果、以下の成果が明らかになった。(1)プログラム実施前に学校の教員と打ち合わせを行い、生徒の人間関係や配慮事項等を確認し、生徒の実態や実施時期に合わせてプログラムのねらいや目標を明確にして実施することで教育効果が高まることがわかり、その際の効果的なプログラムが明らかになった。(2)プログラムデザインについて、宿泊研修の他のプログラムと関連づけることで教育効果が高まることがわかり、他の活動内容や活動時間、学校規模やグループ編成等に応じたモデルプログラムが明らかになった。(3)教員や青少年教育施設職員等のスタッフの効果的な役割について、学校規模のほか、配慮を要する生徒や指導が困難な生徒が多い学校など、学校の実態に応じたスタッフの配置や生徒との関わり方、またプログラムの進め方や留意点等について明らかになった。 青少年教育施設における高1クライシス対応プログラムについて、現場の実態に即した実証的な研究を行い学校規模や実施の時期、宿泊研修の他のプログラムとの関わり方等を考慮しながら、生徒のコミュニケーション能力を育成する効果的なプログラムを明らかにしたことが本研究の重要な発見である。今後の課題は、指導者によって同一プログラムを実施した場合の教育効果の違いを検討することである。
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