【目的】Inverse-PCR法を用いた挿入遺伝子近傍ゲノム配列の選択的増幅・抽出と次世代シーケンス技術を組み合わせる事により、簡便で迅速、低コストに挿入外来遺伝子・ゲノム改変位置特定が可能であると考え、その基盤技術の開発を行う。【方法】長鎖1本鎖DNAを用いたゲノム編集ノックインマウス、および一般的なDNA注入法により作出された外来遺伝子導入マウスの尾からゲノムDNAを抽出し検体として用い、順次下記実験を行った。1、g-TubeによるゲノムDNA断片化、AMPureを用いた断片長選別・濃縮の条件検討2、末端平滑化、およびself-ligationによる自己環状化の条件検討3、Inverse-PCRの条件検討4、次世代シーケンス用ライブラリ作製・混合、MiSeqを用いた次世代シーケンス5、外来遺伝子挿入部位を特定する為の配列解析【成果】1、2ug/50ulのゲノムDNAを使用し、約6kb-10kbのサイズに断片化、10ulに濃縮する事で末端平滑化に必要となる試薬量のコストを削減できた。 2、平滑末端化後、2種類の方法で自己環状化の条件検討を行い、アダプタ無し・400ng/400ulにて自己環状化させる条件で十分な処理が行える事がわかった。 3、Inverse-PCRは2セットのprimerを用いて2段階のPCRを行う事で特異性・収量の確保を試み各種条件検討を行った。その結果、1st PCR、2nd PCRともに、25ul反応系にてPrimeStarGXL 2倍量、2step PCR : アニーリング98℃10秒、伸長時間68℃ 3分30cycleの条件が適切であった。伸長時間、cycle数を増すと非特異的増幅が生じる事がわかった。 4、KAPA HyperPlus kitを使用し13検体のライブラリを作製・等mol混合した後、MiSeq Micro kitにて次世代シーケンスを行い、各検体30万~40万readsの配列データが得られた。 5、現在、配列解析中であり、一部の検体は染色体上の挿入部位の候補が幾つか得られている。挿入配列とゲノム配列をまたぐ結合部分のread特定を行う解析手法を検討中である。今後、本手法にて検出された挿入候補部位に対して、サンガー法による検証を行う事で、開発した技術の妥当性について明らかになると期待される。
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