研究課題
一酸化窒素(NO)は酸化反応によって不活性なnitrite(NO2-)及びnitrate(NO3-)に代謝されるが、最近nitrite/nitrateからNOが生成されることが報告された(Nature 2008)。Nitrateはホウレン草やレタスなどの緑葉野菜に多く含有されている。これらの背景を踏まえて、申請者は、外因性NO産生系の病因的役割を検討し、低nitrite/nitrate食の1.5~4.5ヶ月投与がマウスに血漿nitrite/nitrateレベル低下と代謝症候群を引き起こすことを見出した。この投与期間では体重の増加や高血圧は見られなかったが念のため低nitrite/nitrate食を1年以上投与してみたところ、体重の増加と高血圧が観察され更に生存率の低下も認められた。本研究では、この結果を踏まえて、低nitrite/nitrate食を1年以上投与したマウスの代謝表現型を解析し、血管内皮機能を評価し、更にその機序をRNA sequencingによって検討した。その結果、低nitrite/nitrate食の18ヶ月投与ではより重度の代謝症候群と血管内皮機能不全が見出され、22ヶ月投与では心臓突然死が認められた。この機序には腸内細菌叢の異常が一部に関与していることが示唆された。本研究において申請者は、食事中のnitrite/nitrateが不足すると代謝症候群、血管内皮機能不全、および心血管死が引き起こされることを明らかにした。本研究は、外因性NO産生系の病因的役割を初めて見出した点、及び、カロリー過多が無くても代謝症候群を惹起する食事成分の同定に初めて成功した点に学術的意義がある。
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Diabetologia
10.1007/s00125-017-4259-6
http://w3.u-ryukyu.ac.jp/pharmaco/Pharmacology/youkoso_yao_lihe.html