研究課題
ゲノム刷り込み疾患ベックウィズ・ヴィーデマン症候群(BWS)の約50%の患者は、刷り込み制御領域(ICR)のDNA低メチル化で発症する。しかし、なぜICRにDNA低メチル化が生じるのかは不明である。ICRのDNAメチル化確立には、LIT1遺伝子の転写に伴いICR自身が転写されることが重要であること、少数のBWS症例で認められるICRを含む欠失領域内にエンハンサーが存在することから、このエンハンサーがLIT1遺伝子を転写させ、それに伴いICRが転写されることでメチル化が確立するという仮説を立てた。BWS症例で認められるICRを含む欠失領域内には、エンハンサーが2カ所(Region1 : 1.5kbp, Region2 : 2.6k)存在した。CRISPR-Cas9システムを利用して、Region1とRegion2をそれぞれ欠失したマウスを得た。それぞれの雌の欠失マウスと野生型雄を交配し、F1マウスの解析を行った。ICRのDNAメチル化状態をpyrosequencing法で解析したところ、欠失を受け継いだ仔は同腹の野生型マウスとともに正常範囲のメチル化だった。続いてLit1遺伝子のアリル特異的発現状態をRT-PCR後、SNPを利用したRFLPで調べたところ正常の父親発現だった。発現量を定量PCRで調べたが同腹の野生型マウスと大きく変化はみられなかった。これらの結果からRegion1, Region2単独欠失ではエンハンサーの欠失として不十分であることがわかった。今後は、Region1とRegion2を同時に欠失させたマウスを作成し、解析する予定である。
すべて 2016
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Human Molecular Genetics
巻: 25 ページ: 1406-1419
10.1093/hmg/ddw023