研究課題/領域番号 |
16H01713
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
小野寺 秀俊 京都大学, 情報学研究科, 教授 (80160927)
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研究分担者 |
石原 亨 名古屋大学, 情報学研究科, 教授 (30323471)
塩見 準 京都大学, 情報学研究科, 助教 (40809795)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 低消費電力設計 / 低電圧動作 / 最小エネルギー動作 / 動的電圧制御 |
研究実績の概要 |
本研究では、集積回路を所定の速度制約の下で消費エネルギー最小の動作点(MEP)で動作させるという新規動作機構を提案し、その一実現手法を世界に先駆けて開発するものである。研究内容は、最小エネルギー動作点を求める問題(MEP探索技術)と、動作環境により変動するMEPにどのように追従するかという問題(MEPT動作機構)に分類できる。MEP探索技術については、制御対象回路のMEPの解析・モデル化と、オンチップモニタによる動作状況情報の取得方法を検討する。MEPT動作機構については、VthとVddの更新アルゴリズムの開発と、Vth制御用基板バイアス生成回路の開発を計画している。 本年度における研究実勢の概要は以下の通りである。 MEP探索技術についての実績は、次の2点にまとめられる。第1の成果は、nMOSトランジスタとpMOSトランジスタのしきい値を独立に設定する事により、電源電圧一定の条件において最小エネルギー動作点(MEP)に到達するアルゴリズムを明かにした事である。第2の成果は、静的消費電力と動的消費電力の割合を一定に保つことにより、MEPに準ずる消費エネルギーで回路が動作することを示したことである。 MEPT動作機構については、基板バイアス生成回路をセルベース設計により実装する設計技術を開発した。実際に、65nmのSOIプロセスにおいて基板バイアス生成回路のテストチップを試作し、詳細な動作特性を評価した。開発回路の特徴は、B級出力段により基板容量の充放電を効率的に行うバッファ回路にある。その設計手順を明確化し、制御対象の回路に応じて基板バイアス生成回路を迅速に設計する方法を明かにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の内容は、最小エネルギー動作点を求める問題 (MEP探索技術) と、動作環境により変動するMEPにどのように追従するかという問題(MEPT動作機構)に分類できる。 MEP探索技術に関しては、昨年度にMEP動作を行うための必要十分条件を求めた。今年度は、より簡便なMEP探索技術として、静的な消費エネルギーと動的な消費エネルギーの割合を一定に保つという方法について検討を行った。本方式では、厳密な意味ではMEPに到達することは出来ない。しかしながら、わずかな消費エネルギーの増加を許容することにより、より簡便にMEP動作点近傍に到達することができる。この方式は当初計画では想定していないものであり、当初計画の厳密なMEP探索方法との利害得失について今後検討する。 MEP動作機構については、当初計画通り基板バイアス生成回路を65nmのSOIプロセスにおいてセルベース設計し、その動作特性を実チップにおいて評価することができた。更に、制御対象の回路に応じて基板バイアス生成回路を迅速に設計する方法を明らかにすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
今年度、MEP探索技術に関して、静的な消費エネルギーと動的な消費エネルギーの割合を一定に保つという方法について検討を行った。本方式では、厳密な意味ではMEPに到達することは出来ない。しかしながら、わずかな消費エネルギーの増加を許容することにより、より簡便にMEP動作点近傍に到達することができる。必要なオンチップモニタについても、静的な消費エネルギーを求めるためのリークモニタに集約できる。ハードウェア化の観点からもMEP探索機構が大幅に簡略化される。そこで、厳密なMEP探索とともに、簡略化した擬似MEP探索機構についても検討を行うものとする。MEPT動作機構については、バッファアンプを用いた基板バイアス生成回路の設計手法を今年度に開発することができた。来年度については、MEPT動作機構の更なる低消費エネルギー化と設計容易化を図るために、PLL/DLLの位相同期機構を応用してアナログ回路部分をできる限り削減した回路方式を開発し、基板バイアス生成回路のIP化を図るものとする。
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