研究課題/領域番号 |
16H01717
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研究機関 | 国立情報学研究所 |
研究代表者 |
佐藤 一郎 国立情報学研究所, アーキテクチャ科学研究系, 教授 (80282896)
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研究分担者 |
倉田 成人 筑波技術大学, 学内共同利用施設等, 教授 (00416869)
中島 達夫 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (10251977)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | トランザクション / 分散トランザクション / 原子時計 / 不揮発性メモリ |
研究実績の概要 |
当初計画通りに、①不揮発性メモリを前提として、永続化機構を大幅に簡素化したトランザクションの設計を行うとともに、プロトタイプの実装に着手した。これの特徴はメモリ自体の永続性を利用することで、従来処理コストが大きくなりがちな永続化機構そのものを最小化することができるようになり、結果としてパフォーマンスにも寄与することが期待できる方法であることがわかった不揮発性メモリ搭載コンピュータの購入は、当初計画に通りH29年度となることから、H28年度はSSDの利用を念頭に設計を行った。これは性能モデルガ異なるものの、提案方式の骨格は不揮発性メモリにも応用できるはずである。②高精度の時計を利用した分散同意アルゴリズムを設計するとともに、そのアルゴリズムを前提にした分散トランザクション手法を設計した。これはトランザクションのサーバ側とクライアント側が正確な時計に基づいて、各種メッセージにタイプスタンプを付与することで、サーバ側はそのタイムスタンプ通りに処理する方法となる。また、小型原子時計を搭載したハードウェアの設計を始めた。③データセンタ間分散トランザクションアルゴリズムの設計を開始した。データセンタ間通信はその遅延が大きいことから、通信回数を減らすことが求められるが、本研究では分散同意アルゴリズムのひとつであるPaxosをベースにした分散トランザクション機構を提案・設計した。また、実験環境として10台のコンピュータからなるクラスタ計算環境を構築して、提案するアルゴリズムの評価が可能な体制を整えた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度は基本アルゴリズムなどの基本設計が主要な研究となっていたが、それぞれの設計を行ったことから、概ね順調に進展していると判断する
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今後の研究の推進方策 |
当初計画通りに、H28年度に設計した3つの方法について、設計実装を進める。特に①に関しては、不揮発性メモリ搭載コンピュータが入手でき次第、基本設計の評価を行い、その結果に基づいてアルゴリズムの改良をはかる。H28年度は比較的単純なデータ構造に対するトランザクションを想定していたが、いくつかの具体的なデータ構造を想定した手法も検討する。このほか、不揮発化された主記憶と二次記憶装置を区別することなくアクセス可能にする方法として、不揮発な主記憶向けにシンブルレベルビュー、つまり主記憶と二次記憶装置せずに統一されたアドレス空間で管理する方法を設計する。②高精度の時計を利用した分散同意アルゴリズムを改良するとともに評価を行う。特に通信遅延に変動がある場合、遅延するメッセージに備えてなんらかの楽観的な手法の導入を検討する。③データセンタ間分散トランザクションアルゴリズムは商用クラウドコンピューティングの相違なデータセンターに提案アルゴリズムを実際に動かすことで、可用性や性能を評価していく。これは参照操作における同期待ちが少なく、さらに実質的には十分な直列化可能性を提供するが、複製データの保持管理と、スナップショット隔離に利用する手法となることを想定している。さらに①の主記憶の不揮発化及び、二次記憶装置のフラッシュメモリの利用になると、データそのものをMVCCのバージョンとして格納・管理することコスト的な制約はなくなる。そこでH29年度はバージョン管理と複製管理を融合することで、両管理の重複機能を一つにまとめて、複製データとMVCCを融合した新しい分散データ管理機構を提案する。
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