研究課題/領域番号 |
16H01719
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
若宮 直紀 大阪大学, 情報科学研究科, 教授 (50283742)
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研究分担者 |
寺前 順之介 大阪大学, 情報科学研究科, 准教授 (50384722)
ペパー フェルディナンド 国立研究開発法人情報通信研究機構, 脳情報通信融合研究センター脳情報通信融合研究室, 研究マネージャー (40359097)
ライプニッツ ケンジ 国立研究開発法人情報通信研究機構, 脳情報通信融合研究センター脳情報通信融合研究室, 主任研究員 (70437432)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 無線センサネットワーク / 情報通信工学 / ネットワーク / 情報工学 / 脳・神経 |
研究実績の概要 |
インパルス領域でセンシング、情報処理、通信の全てを実施する超低消費電力で超ロバストなオールインパルス無線センサネットワークアーキテクチャの確立のため、課題1「インパルス領域でのセンシングとノード内符号化アルゴリズムの研究」と課題2「インパルス領域でのネットワーキングとノード間符号化アルゴリズムの研究」に取り組んだ。課題1では、観測情報のノード内符号化にもとづくノード間情報共有の具体例として、二つの平均コンセンサスアルゴリズムを開発した。これらのアルゴリズムでは、各センサノードにノードIDなどのセンサ固有の情報を割り当てる必要がなく、各センサノードは通信可能範囲内にある周囲のノードに対してブロードキャスト通信を行うだけであり、受信確認も必要としない。このような強い制限のもとでも、提案手法による平均値コンセンサスが有効に実現できることを示した。また、LiとFangが提案した、閾値調整を用いたバイナリセンシングアルゴリズムをシミュレーション評価し、提案平均コンセンサスアルゴリズムに適用可能であることを確認した。課題2では、無線センサネットワーク型のトポロジを持つネットワーク上でのReservoir computationにおける分離性能の定量的解析を行った。各ノードの平均発火数や、通信距離の不均一性を変更して分離性を解析し、発火率、不均一性とも高い状態に対して分離性能が向上することを発見した。またインパルス無線センサネットワークに適応可能な新規な位置測定手法の開発を行い、各センサノードからアンカノードまでのホップ数のみを用いて、各センサノードの位置を高精度に推定する手法を確立した。特に、センサノードの空間分布が不均一な場合に、再帰的ベイズ推定を用いて、センサノード位置と密度分布を同時に推定する手法の開発に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
課題1「インパルス領域でのセンシングとノード内符号化アルゴリズムの研究」では、インパルス列における複数インパルス間隔に、センシング情報などの連続情報を符号化することを想定し、複数センサノード間での連携を可能にする符号化や、センサノード間での情報の集約手法を開発するという今年度の計画に基づき、センサノード間の情報共有と集約の具体例として、最も基本的だと考えられる平均アルゴリズムについての研究開発を行い、インパルス無線ネットワークでの実装が期待できる二つのコンセンサスアルゴリズムを開発することに成功した。また課題2「インパルス領域でのネットワーキングとノード間符号化アルゴリズムの研究」では、今年度、脳型情報処理の一つとして提案されているReservoir computationを、インパルス通信を行う無線センサネットワークに適用した際の有効性やアルゴリズムを研究し、また単純なインパルスの近傍へのブロードキャストのが可能な場合に、多数のセンサノードからなるセンサネットワークにおいて、できる限り詳細な情報収集を可能にする手法を研究することを計画していた。これに基づき、今年度の研究成果として、センサネットワーク型のreservoir computationにおける発火率と不均一性の重要性を示し、またセンサネットワークからの情報収集の基盤となるセンサノードの高精度な位置推定技術の開発に成功するなど、当初の計画を順調に進めているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
課題1では、今年度の研究成果である平均コンセンサスを実現する符号化とアルゴリズムを発展させることで、ノード間でのスパイク列送受信のための、より効率的な符号化技術を開発する。具体的には、通常二値あるいは多値データに対して適用されるエラー訂正符号を拡張し発展させることで、スパイク列に適した新たなエラー訂正手法の研究開発を行う。また、市販のデバイスを用いたインパルス無線センサノードのプロトタイプ製作に着手し、提案アルゴリズムの実現性を検証する。 課題2でも、今年度得られた無線センサネットワーク型のreservoir computationや、位置推定の研究成果を発展させることで、インパルス無線センサネッ トワークでの頑健で効率的な情報通信技術を検討する。具体的には、まず、 Reservoir computationを応用した情報抽出アルゴリズムについて、読み出し部を含めたシステム性能の分析を行い、無線センサネットワークの設計指針を示すとともに、消費電力の削減に向けて、通信データ量などのオーバヘッドを評価する。提案手法の通信量と通常のセンサネットワークにおけるデータプレーンと制御プレーンをあわせた全通信量を、同レベルの情報を取得しようとする場合の送受信ビット数で比較し、その上で、通信量と精度とのトレードオフ評価する。また定常的なインパルス通信が必要な現在の位置推定手法を改良し、インパルス無線センサネットワーク上での効率的なスリープ方式を確立する。このスリープ方式の導入によって、インパルス無線センサネット ワークのセンシング能力を維持したまま、数十倍の省電力性を達成することを目指す。さらに、ランダムではなく何らかの特徴的な時空間パタンをもつ事象を効率的に検出するために、脳の選択的注意のメカニズムを利用した情報収集と情報通信を実現するアルゴリズムの検討を行う。
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