研究課題/領域番号 |
16H01728
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
杉原 厚吉 明治大学, 研究・知財戦略機構, 特任教授 (40144117)
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研究分担者 |
三村 昌泰 明治大学, 研究・知財戦略機構, 特任教授 (50068128)
今井 桂子 中央大学, 理工学部, 教授 (70203289)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 不可能立体 / 立体錯視 / 視覚モデル / 不遊立体 / 軟体立体 / トポロジーかく乱立体 / 網膜モデル / ワイヤーフレームアート |
研究実績の概要 |
立体錯視に関しては,前年度から設計を続けている3種類の新しい不可能立体の実例を増やし,錯視がより強く起こるものへ改良できた.「浮遊立体」については,立体表面に貼る,より強力な浮遊図形を開発した.「歪み立体」については今まで用いていた図形を置き換えることによって,錯視を強めることができた.「軟体立体」については,右を指し続ける指など新しい錯視立体を多数試作できた.これらは,直角を優先するという視覚の心理・数理モデルから予想される以上に強い錯視が生じることも確認できた. 今年度はさらに鏡に映すと図形のつながり方が変わって見える新しい不可能立体群を作ることができた.これにはトポロジー撹乱立体という名前をつけた.このトポロジー撹乱立体の心理的・数理的性質を調べることも今後の新しい研究課題である. また,軟体立体とトポロジー撹乱立体は柱体の形をしているが,その厚みを制御する三つの方法を開発できた.これらは,厚み一定を優先させて形を少しなまらせる方法や,形を厳密に保つが,二つの方向から見た厚みが異なることを許すものなど一長一短があるが,目的に応じてどのメニューを選択するのがよいかの指針も作った.以上は主に杉原が統括して研究分担者・協力者と議論しながら進めた. 網膜でとらえた視覚パターンの知覚に関する偏微分方程式モデルは,明るさがまわりに近づく同化現象と,周りから離れる対比現象が,ともに説明できることがわかった.これは,網膜についてわかっている実験的知覚をモデルに組み込むことによって,処理の流れにスイッチング機能を持たせることができたためである.これは主に三村,須志田,近藤が担当した. 不可能立体を含む変則的な立体の表現法・変換法・加工法については,二つの方法から見たとき予め指定した形に見えるワイヤーフレームアートの設計アルゴリズムを構築した.これは,今井,森口が主に担当した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定通り、「浮遊立体」、「歪み立体」、「軟体立体」について、それぞれ錯視の強さを改良すると同時に、作品例を制作できた。さらに、鏡に映すとつながり方が変わって見える「トポロジー攪乱立体」という新しい不可能立体群についても製作法を確立し、その作品例を蓄積することができた。さらに、立体の厚みを制御するヒューリスティックな手法も構成できた。 網膜での視覚情報処理モデリングでは、明暗に関する錯視を説明できた。ワイヤーフレームアートについても、設計アルゴリズムを構築・改良できた。 このように研究は計画に沿って順調に進めることができている。
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今後の研究の推進方策 |
今までに開発し、作品例を蓄積している不可能立体について、その錯視の強さを確認すると同時に、強さを決定している要因について検討し、新しく設計する作品の強さを予測する方法、および強さを制御する法を開発する。 網膜情報処理の数理モデリングについては、今まで1次元の信号を対象にしていたものを2次元および時間変化を伴う信号も扱えるように発展させ、2次元で初めて説明できる錯視の仕組みの解明、および動きを伴う錯視の仕組みの解明に役立てる。 ワイヤーフレームアートについては、鏡に映した姿と元のワイヤフレームを合成すると意味のある形が見えてくるという新しいタイプの設計に挑戦する。 以上の活動と並行して、今までの研究成果を体系的にまとめ、不可能立体についての進化系統樹を作ると同時に、今後に発見が予測される新しいタイプの不可能立体の研究計画構想も立てる。
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備考 |
研究代表者のホームページ、その中で、本研究の成果である不可能立体も紹介している。
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