本研究では、光を用いて得られる陰影画像からの高精細3次元イメージング技術を高度化・体系化し基盤技術として確立することを目的としていた.これまでに課題であった対象シーンに関する制約やセットアップが限定的であるという問題を包括的に緩和させ、様々な実環境で有効な高精細3次元イメージング技術を開発ことが主眼であった.3年間の研究期間の間に、照度差ステレオにおいて光源の輝度やカメラの露光時間が未知であってもユニークな形状が推定可能であることを示し、Semi-calibrated Photometric Stereoと名付けた新たな手法を提案することができた.これ以前には、照度差ステレオ法を利用するためには光の量(光源輝度)が既知である必要があると考えられていたが、それが必要ではないということがわかった。これにより、光源輝度のキャリブレーションという手間を簡略化することが可能となり、高精細3次元イメージング技術がより産業応用に近づいた.更に、深層学習に基づく照度差ステレオ法を開発し、複雑な環境下でも高精度な推定ができることを示した.これまでは機械学習とは無縁であった物理ベースのコンピュータビジョン分野でも機械学習が有効に働くケースがあることが分かり、さらなる深化が期待できる.この深層学習に基づく照度差ステレオ法は、先駆的な研究であり発表後に世界中のグループによりその改善手法が提案されている.以上の通り、本研究の目的であった「実環境で有効な高精細3次元イメージング技術」を大きく進めることができた.
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