研究課題/領域番号 |
16H01740
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
谷川 智洋 東京大学, 大学院情報理工学系研究科, 特任准教授 (80418657)
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研究分担者 |
渡邊 克巳 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (20373409)
尾藤 誠司 独立行政法人国立病院機構(東京医療センター臨床研究センター), その他部局等, 室長 (60373437)
広田 光一 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 教授 (80273332)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | バーチャルリアリティ / 感情・情動 / 認知科学 / 行動誘発 |
研究実績の概要 |
本年度は,長期的な行動の促進・抑制を可能にするために,ウェアラブル装置において安定した情動の誘発を実現するための手法の検討と実証を行った.習熟したタスクであっても自身の実力を常に発揮するのは難しく,様々なタスクに共通の問題であり,自信不足や集中力の欠如,緊張などの精神状態の不調が阻害要因となる.また,精神状態の制御技術は,自身の力を安定発揮させるために必要である.長期的な情動の誘発と行動誘発として,日常的な対人コミュニケーションに大きな影響を与える緊張感の緩和に注目し,フィードバック音声だけによる情動誘発手法を開発し,日常生活行動を阻害せずに円滑な意思伝達支援が出来ることを確認した. また,擬似成功体験の付与によりユーザに自己効力感を生起させ,身体パフォーマンスを向上させる手法を提案し,パフォーマンスの向上を確認することが出来た.また,これらの複数種類の行動に対して,原因帰属の操作手法の適応範囲を明らかにした. さらに,健康管理やタスク管理などの理性にもとづく自己判断が難しい行動を題材として,臨床現場および不特性多数の一般人に本システムを利用してもらうための,医療コミュニケーションを題材としたシミュレーション実験を行った.一般向けのサービス化や東京医療センターにおける臨床応用をおこなうことで,可能な限り多数の利用者を獲得しつつ運用可能にし,それに基づく更なる現象発見を行なうことができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度想定していた,情動二要因理論において,情動の認知には生理的状態の認知が必要であるとされている.ユーザの情動状態やその変化について,アンケートなどによる主観的な評価だけでなく,提案手法の効果を調査する実験設計を行い,情動喚起に伴って変化する行動を計測することで,より客観的に計測可能な評価も行うことができた. 提案手法や成果について,引き続き研究協力者として加わっていただいている東京医療センターの尾藤先生をはじめとして,東京大学医学部精神科医局,慶応大学病院神経内科などメンタルヘルスに関わる先生方との間で,様々な意見交換を実施してきた.その結果,人間の社会的な行動判断に影響を与える行動習慣の改善システムを構築可能であり,現在社会的問題になっている生活習慣病や認知症,鬱の予防など,共感知に基づく行動・習慣の変化によって国民生活の質の向上と健康寿命の延伸を図ることが可能である点で,社会的波及効果も大きいとの意見も得られた.現在,情動的な側面からテクノロジーを使って判断の支援することによって,現在の属人性の高い診療や治療よる制限の克服が期待され,この調査研究をきっかけとして臨床応用に向けたコラボレーションを始めている.
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今後の研究の推進方策 |
本年度の成果は,長期的な行動誘発の実験を行うことができ,提案ししている共感による行動誘発の効果を示唆するものとなっている.長期にわたって運用可能なシステムになっているため,今後長期的な実験と評価を行うことを計画している.また,提案手法の情動喚起効果および提示刺激の強度による行動変化の発生条件を精査し ,適切な刺激提示手法や刺激強度を明らかにする.原因帰属の操作が確認されなかった場合にはその理由を調査し,提示刺激の可体験化および身体知覚変化の誘発に有効な刺激提示手法の改良に結びつけることを計画している. また,引き続き研究協力者として加わっていただいている東京医療センターの尾藤先生をはじめとして,東京大学医学部精神科医局,慶応大学病院神経内科などメンタルヘルスに関わる先生方と協力して,臨床応用を想定した実証実験を行なう予定である.
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