研究課題
H28年度は、IODP日本海掘削地点のうち、U1424、U1425地点の過去300万年間にあたる層序区間について、関(研究協力者)が、高知コアセンターにおいて、村山(研究分担者)の指導の下、XRFスキャナーによる主要・少量元素ピーク強度の測定を行ない、得られた測定結果のうちのBr, Ca, Fe, Tiなどの元素について、ピーク強度に対して管球のaging効果の補正を行い、多田(研究代表者)、入野(研究分担者)らが行ったHole間対比に基づいて、過去300万年間に及ぶ高解像度連続データに編集した。特にBrの連続データは、過去300万年間に渡る東アジア夏季モンスーンの変動を記録するもので、これまでに類を見ない長さと時間解像度を持つユニークな記録である。また、関はU1425地点の約30試料について通常のXRF分析を行い、Ca, Fe, Tiなどの元素について検量線を導出して、XRFスキャナーのピーク強度データを定量値に変換した。更に関は、U1424地点の26試料、U1425地点の74試料についてTOC, C/N, d13Corgの分析を行い、Br countとの比較を試みた。一方入野は、両地点におけるガンマ線減衰強度から乾燥かさ密度の推定を試み、多田が中心となってU1424地点について作成した高精度年代モデル、および各地点間での暗色層の対比に基づいて、過去300万年間に渡る質量堆積速度の高時間解像度連続復元を行った。高橋(研究分担者)は、U1423, 1425地点のコアから選び出した約100試料について、ICP-AES, ICP-MSを用いて酸化還元鋭敏元素の分析を行った。また、多田、入野は、IODP日本海掘削地点におけるHole間対比、連続堆積記録編集、連続堆積記録の地点間対比、詳細な年代モデルの作成、年代モデルに基づく、物性データの連続記録編集結果を投稿した。。
2: おおむね順調に進展している
H28年度(繰越のためH29年6月まで)は、U1424およびU1425地点の過去300万年間にあたる層序区間について、XRFスキャナーによる主要・少量元素ピーク強度の測定を完了した。当初の予定は260万年前までだったが、272万年前にEASMを反映すると考えられる変化が認められたため、分析対象の年代の下限を300万年前まで延長することにした。得られた測定結果のうちのBr, Ca, Fe, Tiなどの元素について、過去300万年間に及ぶ高解像度連続データに編集した。また、U1425地点の約30試料(当初の予定では、2地点で200試料前後)について通常のXRF分析を行い、Ca, Fe, Tiなどの元素について検量線を導出し、XRFスキャナーのピーク強度データを定量値に変換した。また当初の予定では、約100試料についてESR, XRD, 粒度分析を行う計画だったが、XRFスキャナー分析の完了を優先させた。これら、未完了の分析については、次年度に分析を行う予定である。また、U1424、U1425地点の 計100試料についてTOC, C/N, d13Corgの分析を行い、海成有機物の含有量を推定してBr countとの比較を行い、Br countが海成有機物の含有量を反映する事を示した。更に、両地点におけるガンマ線減衰強度から乾燥かさ密度の推定を試み、U1424、U1425地点について過去300万年間に渡る質量堆積速度の時代変化の復元を行った。また、U1423, 1425地点のコアから選び出した約100試料について、ICP-AES, ICP-MSを用いて酸化還元鋭敏元素の分析を行った。以上のように、一部に計画の遅延が出ているものの、全体として、計画は順調に進んでいる。
H29年度(H30年度にも繰越をしているのでH29年6月~H30年6月)には、村山、三武(院生;研究協力者)がU1426地点のコアの分析範囲を300万年前まで延長してXRFスキャナーで分析する。これにより、XRFスキャナーデータについて、U1424, U1425, U1426地点からなる深度トランセクトが完成する。また、U1425地点の試料約80試料について、王(PD研究員;研究協力者)がESR分析、XRD分析、通常のXRF分析、粒度分析を行う。その結果を元に、入野、王、山田(研究分担者)、関、三武が因子分析を行って風成塵因子を抽出し、その化学、鉱物、粒度、ESR組成の推定を行う。そして、抽出した因子の寄与率とXRFスキャナーの元素カウントとの関係を調べ、XRFスキャナーのデータから風成塵因子の寄与率の代替指標(風成塵指標)を探し出す。風成塵指標が抽出できたら、前年度に復元した全堆積物の質量堆積速度に風成塵因子の寄与率を乗じ、風成塵の質量堆積速度(フラックス)の過去300万年間の変動をU1424, U1425, U1426について復元する。また、ESR分析の結果を基に、過去300万年間の風成塵の供給源変動を復元する。これらの結果をもとに、多田が中心となって、風成塵フラックス変動と供給源変動の間の関係、Br countに示される東アジア夏季モンスーン変動との関係を検討し、その結果を論文にする。また、U1423,U1425, U1426地点の過去20万年間について酸化還元鋭敏元素濃度の時空間分布変動を復元して貧酸素環境の定量化を行い、それが東アジア夏季モンスーン変動とどう関係するかを調べる。
すべて 2017 2016 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (10件) (うち国際共著 7件、 査読あり 9件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (45件) (うち国際学会 19件) 備考 (1件) 学会・シンポジウム開催 (1件)
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