研究課題/領域番号 |
16H01766
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
茅根 創 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 教授 (60192548)
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研究分担者 |
波利井 佐紀 琉球大学, 熱帯生物圏研究センター, 准教授 (30334535)
佐藤 縁 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 省エネルギー研究部門, 上級主任研究員 (40357132)
栗原 晴子 琉球大学, 理学部, 助教 (40397568)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 地球温暖化 / 海洋酸性化 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,硫黄鳥島のCO2 湧出口において造礁サンゴがソフトコーラルに空間的にシフトしている要因を,高CO2 に対する造礁サンゴとソフトコーラルの,加入と成長(代謝)の差異によって説明して,その閾値を求め,将来の酸性化によるサンゴ礁群集の変化を予測することである. 研究初年度の平成28年度は,湧出口とその周辺の地形,底質と生物相を面的に把握するために,ドローンによる空撮と,測線沿いに直接観察による調査を実施した.その結果,CO2 湧出口から周辺にかけて,生物相が漸移的に変化していることが明らかになった.また,2016年8月と10月の調査では,造礁サンゴとソフトコーラルが,大規模に白化していることが確認された.これは,同年夏の琉球列島全域で起こった白化が,硫黄鳥島でも起こったことを確認したもので,今後の推移を継続的におっていくことで,CO2 の濃度勾配に対して,造礁サンゴとソフトコーラルの回復過程の差異を明らかにすることができる. また,CO2 湧出口から周辺にかけて,CO2濃度などの物理化学的性質が,空間的にどのように変化しているのかを明らかにするために,アルカリ度,全炭酸,栄養塩,懸濁態炭素・窒素,溶存炭素・窒素,クロロフィル測定のための試料を採取して,分析を行った.さらに,水質の時系列変化を記録するために,塩分,水温,pH,溶存酸素,濁度の連続計測を開始した.現場移植実験を行うための架台を設置して,連続観測を開始した. CO2 湧出口とCO2 の影響を受けない海域との間で,移植実験を行うために,移植架台を設置した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究初年度として,現地に渡島して調査を実施するための基本的な準備を行うことができた.白化というイベントがあったが,CO2 濃度の異なる海域で,造礁サンゴとソフトコーラルの白化からの回復の差異を明らかにすることによって,群集シフトの時間的な差異を明らかにすることができる.
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今後の研究の推進方策 |
本年度は,主に硫黄鳥島の現地における観測と試料採集,実験を行う.年度内に3回の調査を予定している. 1)群集調査:CO2湧出口とそこから離れた5測線に沿って,方形枠(コドラート)によって底生生物の分布を記載する.永久コドラートを設置して,生物の経年変化を追跡する.マルチコプターにより空撮を行って,底生生物の分布を面的に把握する.ソフトコーラルと砂を採取して,高CO2海域と低CO2海域での,底生生物相の差異を明らかにする.着底基盤を設置して,ソフトコーラルと造礁サンゴの加入率を調査する. 2)環境条件の観測:pH,水温,濁度,塩分を,長期的にモニタリングする.CO2計によってCO2濃度の時間空間的変化を明らかにするとともに,適宜採水して炭酸系(全炭酸,アルカリ度),栄養塩濃度を計測して,CO2湧出口とその周辺の物理化学条件の時空変動を明らかにする.3)群集分布と環境条件を比較して,CO2濃度が群集構成に与える影響を評価する. 4)現場実験:現地に移植架台を設置して,高CO2海域とコントロールとの間で,ソフトコーラルと造礁サンゴの移植実験を行って,CO2濃度が成長速度に与える影響を評価する. 5)他地域との比較 他のCO2湧出サイトとの生物相,環境条件の比較を始める.
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